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アーノルド・シュワルツェネッガーが、アクションを封印して挑む社会派人間ドラマ『アフターマス』

どうも、trifaです。

いよいよ本日から、ターミネーター/ニュー・フェイト』が公開になりましたね。

シリーズのそもそもの発起人、ジェームズ・キャメロンが久々にシリーズに復帰したことで、ターミネーター2の正統な続編(ここら辺、結構入り組んでますよね)とも言われる本作。これでようやくシリーズが前に進んでくれる嬉しいですね……!

さて、『ターミネーター』シリーズと言えば、なんと言っても、シュワちゃんこと、アーノルド・シュワルツェネッガーですよね!

彼はシリーズ一作目から、劇場版の『ターミネーター』シリーズには毎回登場しています(※)。

そしてまた、シュワちゃんと言えば、コマンドーイレイザーなど、80〜90年代を代表するアクションスターなわけですが、今回紹介するアフターマスは、そんな彼が、アクションを封印して、演技のみで魅せる意欲作です!

※4では、ご本人が出演したわけではなく、フルCGで出演しています。

 

まさかの似た表紙でした(笑)

アフターマス』のあらすじ

工事現場で働くローマン・メルリックは、孫を妊娠した娘と、その娘を迎えに行った妻が帰って来るのを心待ちにしている、家族思いな男だ。

そして今夜、ついに二人が帰ってくる。

彼は、家を飾り付け、上司の計らいで仕事も早くあげてもらい、はやる気持ちを抑えながら空港のロビーへと向かう——。

それと同じ頃、愛する妻と息子とともに幸せに暮らしている男、ジェイコブ・ボナノスもまた空港にいた。

彼は、この空港の管制官だ。

今まで、大きなミスもなく、普通に働いている彼であったが、今日に限って、同僚は席を外しており、また、通信機器のメンテナンスのため、通信が繋がりにくくなっていた——。

——そして、悲劇が起こってしまう。

様々な不運な偶然が重なった結果、空中で飛行機同士が衝突し、乗員乗客271名が死亡するという未曾有の航空機事故。

その事故の【余波/aftermath】が、家族を愛する二人の男の人生を狂わせていく——。

「俺はただ謝ってほしいだけなんだ。あいつらは、誰も謝ってくれなかった」

 


レビュー

復帰後、味わいの増したアーノルド・シュワルツェネッガー

アーノルド・シュワルツェネッガーは、ボディビルダーとして名を馳せた後、元祖肉体派俳優としてハリウッドで活躍し、様々なアクション映画の名作で主演を務めます。その後、2003年〜2011年の間、カリフォルニア州の知事を務めました。

その後、俳優に復帰し、ラストスタンドや、サボタージュなどに主演しますが、興行収入は振るわずといった感じです。

しかし、じゃあ駄作かと聞かれれば、その二作に関して言えば、そうではないと私は思います。

ラストスタンド』は現代版西部劇と言った味わいで、久々にシュワちゃんのアクションを堪能できますし、『サボタージュ』は、そして誰もいなくなったに大胆なアレンジを加えてアクション映画化したもので、癖が強いながら、独特な味わいがあります

個人的には、どちらも大好きな作品ですね。

そしてまた、シュワちゃんも、肉体派俳優としてではなく、一人の役者として、いい味を出すようになってきたと感じる二作でもありました。

シュワルツェネッガードスンとした存在感に、年齢を重ねて味わいの増した顔。そして、抑制の効いた演技。それらが組み合わさり、唯一無二の存在感を放つ、いい役者になっていたのです。

 

演技で魅せるシュワちゃん

さて、本作は、そんなシュワちゃんアクションを封印し、いよいよ演技だけで勝負を仕掛けた一作でした。

シュワちゃんが演じるのは、工事現場のいち作業員(現場監督?)という、一般人で、なおかつ、不幸な事故によって家族を失い、人生の歯車もどんどん狂っていくという、なかなかに難しい役どころでした。

しかし、この役柄が今のシュワちゃんにベストマッチ!

最初から最後まで、非常にいい演技で観るものの心を鷲掴みにしてくれるのです。

例えば、彼が事故を知るシーン。

別室に連れていかれるという、明らかな異常事態でありながら、それを無視しようとするかのように明るい笑顔を見せるシュワちゃん

このシーンでの、ちょっと不器用そうで、でも、人懐っこそうな笑顔が、ことの顛末を知っている我々からは、痛々しくて仕方がありません。

その後の人生を狂わされていく過程も、彼の不器用さ不安定感を上手く煽り、観ていてハラハラさせられっぱなしです。

アクションなしでも、その存在感で、しっかりとこちらの心を鷲掴みにしてくれる、俳優シュワルツェネッガーの確かな魅力がそこにはありました。

被害者にも加害者にもなり得る物語

本作は、ある一つの飛行機事故を被害者と(一応の)加害者、両方の視点から描いた作品です。

そこで展開する物語は、勧善懲悪的なスパッと割り切れるものではありません

なぜなら、本作の加害者は、彼が完全に悪いとは言い切れないからです。

小さな事柄の様々な積み重ねにより、結果として加害者になってしまった

それが、本作の加害者なのです。

そして、こうしたことは、日常でいくらでも起こり得ることであり、そして、実際に、日々起こっていることでもあります。

本作の場合は飛行機事故という大きなものとして描いていますが、例えば、小さな積み重ねが交通事故を引き起こしてしまうということなら、我々にも起こり得ますよね?

そして、その時、自分が被害者になる可能性も、加害者になる可能性も、同じだけあり得るのです。

本作では被害者だったローマンも、工事現場で事故が起きれば、もしかしたら、加害者になっていたかもしれません。

本作で描かれているのは、そういうレベルの身近さを持つ話なのです。

そして、自らがそうした事態に巻き込まれてしまった場合、本作の二人の主人公と違う行動ができると心の底から言い切れる人は、いったいどれだけいるのでしょうか……?

まとめ

ちなみに、本作で起こったことは、その細部こそ変更を加えられてはいるものの、大枠では、実際にあった話をもとにしています

飛行機事故も、その後に起こったことも、です。

それを踏まえて観ると、本作の味わいはより深く、そして、より考えさせられるのではないでしょうか。

ちなみに、本作の主役をシュワちゃんが務めたことに関してですが、映画にも詳しいラッパーの、ライムスター宇多丸さんが、こんなようなことを言っています。

「スタローンにとっての、『ランボー/最後の戦場』のように、過去作でやってきたことにリアルのフィルターを通したとも取れる」

完全な引用ではないのですが、大体はこういう内容でした。

要するに、スタローンがランボーシリーズで見せてきた【ヒロイックな活躍】は、現実的に見れば【虐殺】ですよとランボー/最後の戦場』で我々に示してみせたように、本作では……ということです(実話ベースなのでネタバレもクソもないのですが、一応伏せておきます)。

それを念頭において本作を観ると、「なるほど、確かに」と私は思いました。

シュワちゃんにそんな意識があったかどうかは分かりませんが、シュワちゃんがアクションを封印してでも本作に挑んだということを考えると、非常にしっくり来る見方だと思います。

そんなことも含みつつ、色々考えさせられてしまう本作。

あなたは、どう観ますか?

 


※今回紹介した『アフターマス』は、2019/11/8現在、アマゾンプライムにて無料配信中です