どうも、とりふぁです。
皆さんは、アニマルパニック映画ってご覧になりますか?
古くは、ヒッチコックの『鳥』や、スピルバーグの『ジョーズ』など、どちらかといえばホラーよりの作品が多く、近年では、『シャークネード』や『ジュラシック・ワールド』など、笑えたり心躍る活劇だったりと陽性の作品にシフトしてきた感のあるジャンルですね。
実を言うと、子供の頃に恐怖映画が苦手だったこともあり、個人的にはそれほど積極的に観るジャンルではなかったんですが、今となってはホラーも全然イケるようになったので、今後はドンドン観ていこうかなと思うジャンルだったりします。
本日は、そんなアニマルパニック映画より、『クロール/凶暴領域』のご紹介です。
ポップコーン片手に観るジャンルとあなどるなかれ、ホラー、アクション、ドラマが三位一体となった良作でしたよ!
『クロール/凶暴領域』のあらすじ
ヘイリー・ケラーは、指導熱心な父、デイブにより、大学の競泳選手に選ばれるほどの実力を身につけていた。
しかし、最近の戦績は奮わず、スカラシップも逃してしまう。
さらには、両親の離婚すらも、自らと水泳に原因があるのではないかと彼女は考えていた。
そんな折、彼女の故郷、フロリダに巨大ハリケーンが接近。
ヘイリーは、姉から「父と連絡がとれないから、確認しに行って欲しい」との知らせを受け、デイブがいると思われる彼女の生家へと向かう。
その地下室で父を発見する彼女だったが、デイブは重傷を負った姿で気を失っていた。
なんとかデイブを外へ連れ出そうとするヘイリーだったが、巨大ハリケーンによる浸水の恐怖と、彼女達を狙う、凶暴な肉食獣の息吹が、刻一刻と迫ってくるのであった——。
「お前が、頂上捕食者-apex predator-だ!」
レビュー
一分の隙もなく緊張感がブッ続く至極の87分間
本作の一番の特徴は、なんといっても87分間という時間の中にギッチリと見せ場とドラマが詰め込まれているという、その計算され尽くしたタイトさだと思います。
こういう、アニマルパニック映画は、えてして「細かいところにツッコんだら負け」的なゆるさがあり、なんなら、作品によっては、そのゆるさをこそ楽しむジャンルだったりするわけですが、その点、本作はそうしたゆるさが全くなく、いわば、こうしたジャンルの初期の傑作達に似た作りになっています。
本作では冒頭の10分程度で、主人公の持つ能力や、抱える葛藤、舞台設定や、なぜワニが襲って来るのかといったことを、説明台詞ではなく、極めて効率的かつ映画的な画でサラッと説明し、あとはひたすらにワニvs父娘の生存競争である本編に集中させるという潔い作り。
なおかつ、肝の設定となる【なぜワニが襲って来るのか】、そして【なぜワニと戦わなければならないのか】という部分も、極めて無理がなく、納得させられる設定になっているのも見事。
しかも本作は、【ワニvs人】というアニマルパニック的な側面だけでなく、タイフーンの影響で徐々に水位が上がっていく地下室から脱出しなければならないという、タイムリミットサスペンスの要素まで出されているもんだから、その緊張感たるや……!
まさに無駄のない完璧な作劇です!
一つの要素に二つの意味を詰め込む見事な手腕
そしてまた見事なのが、前述したタイトさにも繋がることですが、一つの要素に二つの意味を詰め込んで見せる手腕です。
例えば、タイトルである【Crawl(クロール)】。
この単語は、もちろん泳法の【クロール】という意味もありますが、もう一つ、【這う】という意味もあるのです。
つまるところ、たった一言で、敵であるワニと、主人公とのそれぞれの特徴と武器を表しているんですね。
さらに、前の節で徐々に水位が上がる地下室というシチュエーションを書きましたが、それは、主人公達にとってのタイムリミットを示すと同時に、ワニと主人公という、共に【泳ぎ】を武器とする者同士の頂上決戦の舞台が整っていくという側面もあります。
そして、物語の舞台となる地下室も、ワニの這いずる気味の悪い空間であるとともに、主人公達にとっては、かけがえのない思い出のつまった家でもあります。
このように、本作は一つの要素に二つの意味を詰め込むことで、タイトな上映時間の中に豊かな深みを持たせることに成功しています。
こんなに映画的な演出を、極めてジャンル映画的な作品の中でサラッとこなしてみせる。
まさに職人技と呼ぶにふさわしい仕事です。
アニマルパニックのスリルだけじゃない、家族再生の物語
本作は、まごうかたなきアニマルパニック映画ですが、しかしその骨子は、父と娘の家族再生譚となっているところも外せません。
本作の主人公は、指導熱心な父親によって水泳を仕込まれたことに感謝しつつ、でも、その熱心な指導のせいで両親が離婚したのではないかという疑念も持っており、つまりは、父親に対し、非常に複雑な気持ちを抱えています。
さらには、彼女の自信の源であった水泳も、今となっては成績が奮わずという状況。
大好きだったはずの水泳と父親が、ある種の呪いとなってしまっているのが、本作における主人公の現状です。
そんな中、重傷を負った父を救うため、父から授けられた水泳スキルを遺憾無く発揮してワニと闘うという展開は、非常手に汗握るとともに、熱く感動する展開でもあります。
男親である自分としては、正直、ちょっとウルッと来てしまいました……。
よもや、軽い気持ちで観たアニマルパニック映画で、ここまで感動させられるとは思いませんでしたね(笑)
まとめ
というわけで、『クロール/凶暴領域』のご紹介でした。
ぶっちゃけ、最初は『シャークネード』方向のお馬鹿ムービーを期待して観たのですが、まさかまさかの嬉しい予想外で、スリリングかつ感動させられる、普通にいい映画でした!!
こういうジャンル映画の枠組みの中で、それを超えた感動や面白さをもたらしてくれる作品に出会うと、非常に嬉しくなりますね。
「この瞬間のために映画好きやってんだ!」というか(笑)
皆さんも、ぜひぜひご覧ください!
あるいは、「このアニマルパニック映画オススメだよ!」なんてのがありましたら、コメントやTwitterなどで教えて下さいませ(・∀・)
ではでは!
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