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伝説の解体と再構築の物語、ついに完結『007/NO TIME TO DIE』

どうも、とりふぁです!

前回の記事からめちゃくちゃ間が空いてしまってすいません(^◇^;)

その間にもヒメアノ〜ルとか『THE SUICIDE SQUAD』とか記事にしたい映画にはいくつか出会いましたし、攻殻機動隊-GHOST IN THE SHELL-』IMAXとかも観てはいたんですが、環境の変化とか諸々ありましてなかなか筆が動かず……。

しかし!

これを記事にしないのはさすがに嘘だろうという映画を観てきたので、今回、久々の更新とあいなりました!!

その作品は、伝説的スパイ映画シリーズのシリーズ第25作目にして、一つのシリーズ完結編でもある『007/NO TIME TO DIE』です!!!

それでは早速、いってみましょう!!!!

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『007/NO TIME TO DIE』のあらすじ

英国から殺しのライセンスを与えられ、数々の活躍と夥しいまでの暴力の歴史を刻んできた伝説の男、MI6最強のダブルオーナンバー、007ことジェームズ・ボンド

度重なる悲劇と不屈の闘志の末に宿敵ブロフェルドを倒した彼は、その闘いの旅の中で出会った最愛の女性、マドレーヌ・スワンと共に歴史の舞台から姿を消した。

そうして、愛と平穏の日々を手に入れた二人であったが、しかし、それで全てが終わったわけではない。

ボンドとマドレーヌ。

それぞれの過去と因縁が、今、ゆっくりと、だが確実にその魔手を伸ばそうとしていた——。

「——ボンド。ジェームズ・ボンド

 

 

 


レビュー

金髪碧眼、掟破りのジェームズ・ボンド

ジェームズ・ボンドといえば、イアン・フレミングが生み出したスパイ小説シリーズの主人公であり、そして、それ以上に1962年から現在まで続く、超大型映画シリーズの主人公として、まさに知らない者はいない伝説のキャラクターです。

彼は、英国の諜報機関MI6に所属するエージェントの中でも、選りすぐりの者にしか与えられない00(ダブルオー)ナンバーおよび殺しのライセンスを与えられた優秀なスパイにして、出会う女性は全て口説くと言っても過言ではないほどのプレイボーイ、そして、美食家で酒好きでもあります。

そんなジェームズ・ボンドは、初代のショーン・コネリーから、ジョージ・レイゼンビーロジャー・ムーアティモシー・ダルトンピアース・ブロスナンという風に、時代によって俳優が代替わりしながら続いていくというキャラクターになっています。

その最新が本作でも主演を務めているダニエル・クレイグなわけですが、しかし、彼は初めからボンドとして歓迎されたわけではありませんでした

なぜなら、それまでのボンドのイメージである、黒、またはブラウンの髪と瞳甘いマスクという風貌から最もかけ離れた、金髪碧眼に厳つい顔というビジュアルだったためです(あと、個人的には初見の頃はなんとなくロシアっぽい顔付きだなとか思ってました……)。

その思い切った配役が発表された当時、ネットなどで、誰もが「あんなボンドはダメだ」と言っていたのをよく覚えていますし、正直、自分も否定派でした……。

しかし、そんな逆風の中で公開された007/カジノ・ロワイヤルは、ドライでハードな作風と、それまでの007映画像を徹底的に裏切る展開、演出、オチであるにも関わらず、というか、むしろそれが評価される大傑作でした。

これにより、ダニエル・クレイグ=ジェームズ・ボンド、つまりは金髪碧眼のジェームズ・ボンドが世に認められたのです。

 

↑歴代007シリーズを全て詰め込んだ決定版BOXです!


転落からの大復活

そうして、1作目を超える期待が寄せられた中、2作目となる『007/慰めの報酬が公開されました。

しかし、大きな期待を寄せられていたはずの『007/慰めの報酬』は、2007年〜2008年にかけて起きた全米脚本協会の大規模ストの煽りをもろにくらってしまい、あまりいい作品とはならず、評価も酷いものになってしまいます

そして、これにより、彼のシリーズは一時沈黙することになるのです。

その後、長い時を経て、2012年に『007/スカイフォールが公開となります。

前作の失敗により、クレイグのボンドシリーズはおろか、『007』シリーズ自体が【既に時代遅れなのではないか】と言われている中で公開された同作でしたが、大方の予想を裏切り、その完成度は長きに渡る『007』シリーズ全体の中でも屈指のもので、さらに、『007』というシリーズ自体を自ら批評し、なおかつ再定義するかのような歴史的傑作だったのです!!

その後、『007/スペクター』において、今度は、今の時代でもシリーズの原点回帰的な面白さは描けることを証明し、『007』シリーズは完全復活を遂げました

そんな中で公開されたのが、今回ご紹介する最新作にして、ダニエル=ボンドシリーズの完結編、『007/NO TIME TO DIE』なのです。

 

ダニエル・クレイグ版007だけを集めたBOX。日本未発売ですが、字幕版は収録されているようです。


ダニエル=ボンドシリーズを5部作として定義する作品

本作を一言で表すなら、個人的には、【ダニエル=ボンドシリーズを5部作として定義する作品】だと思います。

ダニエル以前のボンドシリーズは、ある程度設定などを引き継ぎつつも、基本的には1作1作で完結している作品でした。

ところが、ダニエルのボンドシリーズは、1作目の直後から2作目が始まったり、3作目で起きた出来事を受けて4作目になっていたりと、割と直線的に繋がった物語となっていました。

とはいえ、2作目から3作目の期間が、実際の撮影としても、物語内の時間軸としても空いてしまっていたことにより、1と2、3と4のような物語になってしまっていたのです。

そこを本作は、1作でボンド自身にかかった【とある呪縛】を軸に物語が進みつつ、【4作目の登場人物達にまつわる敵が登場する】ことで、2作目と3作目のミッシングリンクを繋ぐかのような物語を描き、シリーズ全体を一つの物語としてまとめ上げることに成功しています

しかも、その結末は、ダニエル=ボンドシリーズを終わらせる上で、これしかないという完璧な結末であり、その意味でも、シリーズ完結編として最高の作品となっていました……!

正直、完璧過ぎて私ゃあ号泣しましたよ……!!!!

 


キャリー・ジョージ・フクナガの確かな手腕

本作の脚本(共同者もいます)および監督は、キャリー・ジョージ・フクナガという方で、個人的には、全ドラマを合わせても一番の傑作だと思っている『True Detective』シーズン1の監督さんとして心に刻まれている方です。

『True Detective』シーズン1は、過去に起きた解決済みの連続猟奇殺人事件と、現在進行中の連続猟奇殺人事件を現在と過去という二つの時制から追いかけていくという作りで、1時間×8話という、海外ドラマにしては短いエピソード数ながら、濃密なストーリーと圧倒的な完成度故に、【8時間の映画】とも称されている作品で、「映画にしか出ない」と公言している名優、マシュー・マコノヒー「これなら出る」口説き落とされ、今なお彼のフィルモグラフィー上唯一のテレビドラマ作品となっている作品でもあります。

その完成度はまさに折り紙付きなのですが、中でもすごいのは、そのテンポの良さです。

ドラマとしては短い8話とはいいつつ、映画として一気見すれば当然8時間かかるわけなのですが(変な文ですが……伝われ!)、その長さを全く感じないんですよね。

体感的には、大作映画(2時間〜2時間半)くらいの印象

それは多分、巧みな話運びと、キビキビした場面転換によるものだと思うのですが、そのテンポの良さは、本作『007/NO TIME TO DIE』にも引き継がれています。

本作は、2時間43分という長尺なのですが、アバンからラストまで、全くダレることなく話が進んでいくので、体感的には1時間半〜長くても2時間くらいのイメージでした。

じゃあ、チャカチャカチャカチャカ忙しく場面が展開していくのかといえば、そうでもなく、ここぞ! というところでは、むしろ、ドシッと構えてじっくりとシーンを見せてくれます

ここら辺の塩梅がめちゃくちゃ上手い!

そして、キャリー監督といえば、有名なのが『True Detective』シーズン1の第3話で魅せた神業的ワンカットアクション(とあるギャングの根城に乗り込んでから、重要人物を拉致して車に乗るまでを、銃撃戦なんかも織り交ぜつつ、結構な尺のワンカットで押さえてるんですよ! あのシーンは本当凄まじいです!!)があるのですが、そのお得意のワンショットアクションも本作のクライマックスで披露してくれています。

やり過ぎるとどうかと思いますが、やっぱりメリハリの効いたワンカットアクションは緊張感抜群で最高ですね!

こうした確かな手腕の上で、007ならではのゴージャスさ、優雅さに溢れた映像が続いていくので、作品全体に【映画を観るということの喜び】に溢れているんです。

ああ、もう、最高……。

 

↑大傑作『True Detective』シーズン1!ドラマ好きも映画好きも、未見の方は是非!!


現代の物語には欠かせない、自立した女性達

007と言えば、ボンドガールと呼ばれるヒロイン(または敵)も魅力の一つですが、本作における彼女達は、現代的なアップデートがされています

それは、それぞれの女性がしっかり自立しているということです。

本作には、4人のボンドガールが登場するのですが、その中の誰一人として、ボンドに助けられる女性はいないのです。

自ら窮地を脱出し、あるいは、窮地に陥ることもなく難所を突破し、そして、むしろボンドを救うかの如き活躍までしてみせます。

クレイグ版におけるボンドガールは、今までも逞しい女性ばかりでしたが、その傾向は、本作において限界突破したと言ってもいいかもしれません。

彼女達は、ボンドに守られる存在ではなく、誰かに利用される存在でもなく、皆がそれぞれの意思と力を持ち、自らの実力で道を切り拓いていく、男性と共に、並び立つ女性なのです

というか、もはや、ボンドガールという言い方すら時代錯誤でしょうね。

ボンドなくとも男性なくとも力強く歩いていく、真の女性像がそこにはあります。

ガールズエンパワーメントが叫ばれて久しいですし、それがノイズになる作品もなくはないのですが、しかし、これは紛れもなく素晴らしいことです。

マクガフィンとしての女性として描きがちだった007シリーズで、こういった女性が描かれていること、このこと自体に、何か感慨深いものを感じますね……!

 


まとめ

というわけで、『007/NO TIME TO DIE』のご紹介でした!

自分の世代だと、ピアース・ブロスナンのイメージが完全に定着している(しかも、今でもやはりボンドというキャラクターに対するピアース・ブロスナンは完璧なバランスだと思います)中で始まったダニエル・クレイグ版でしたが、007/カジノ・ロワイヤル』で頭をぶっ叩かれ、『007/スカイフォール』で度肝を抜かれ、そして、『007/NO TIME TO DIE』で涙腺を崩壊させられるという、振り返ってみれば、本当に最高の映画シリーズでした!!!

これにより、次のボンドはまたかなり難易度が上がったとは思いますが、しかし、また新たな傑作が生まれると信じて、本シリーズは今後も追い続けていこうと思っています。

とにもかくにも、ありがとう、ダニエル・クレイグ お疲れ様、ダニエル・クレイグ!!!

最後まで、映画史に残る大傑作シリーズだったよ!!!!