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ペンギンとおっぱいと世界の果て『ペンギン・ハイウェイ』

どうも、とりふぁです。

秋の気配が遠ざかり、冬の予感が近づいてくる。

そう、今年もそろそろお終いですね。

そんな今日この頃ですが、今回は、夏アニメのご紹介です(笑)

つまりは、【夏】を舞台にしたアニメですね。

となりのトトロや、サマーウォーズ時をかける少女など、夏アニメには傑作が多い気がします。

それは多分、日本人が【夏】という季節に感じる高揚感や、その後に訪れる【夏の終わり】の切なさに、特別な感情を抱いているからかもしれません。

今回は、そんな夏アニメから、去年公開という比較的新しい作品、ペンギン・ハイウェイのご紹介です。

 

ペンギン・ハイウェイ』のあらすじ

小学四年生のアオヤマは、世界の謎を論理的に解き明かすのが大好きで、研究熱心な、ちょっと変わった男の子。

そんなアオヤマの最近の研究テーマは、もっぱら、近所の歯科医院に勤めるお姉さんの【おっぱい】のことだ。

お姉さんは、そして、お姉さんのおっぱいは、なぜこんなにも彼の心を打つのか。

彼は、その謎を明かしたくてたまらない。

そんなある夏の日、アオヤマは登校途中で、街中にいるペンギンを目撃する。

なぜ、こんなところにペンギンが?

その素朴な疑問が、やがて、彼の人生の一大事と化していく。

これは、ペンギンとおっぱい、そして、世界の果てについての、ひと夏の物語である——。

「私というのも結構謎でしょ? この謎を解いてごらん。

どうだ、君にはできるか?!」

 


ペンギンとおっぱいが織りなす奇想天外ストーリー

あらすじを書きながら、自分でも「なんだそりゃ?!」となったわけですが(笑)

でも、本作はまさに【ペンギンとおっぱい、そして、世界の果てについてのひと夏の物語】なんです。

主人公のアオヤマくんは、実際の小学生にもたまに見かける、研究大好きなおませな男の子。

そんな彼が、街に現れたペンギンの謎を追ううちに、魅力的お姉さん(およびそのおっぱい)と、いつか到達してみたいと考えている世界の果てについての謎に迫っていくことになるんです。

全く意味がわからないと思いますが、本当にそうなんだから、これはもう観てもらうしかないです(^◇^;)

こんな話が思いつくなんて、原作者の森見登美彦さんはどんな頭をしているんでしょうね?!(褒めてます

素朴な疑問が、どんどんハレーションを起こしていく中盤からの展開は、ある種、快感ですらあります(笑)

ひと夏の経験を経て少年が成長する物語

さて、そんな奇想天外な本作ですが、物語の骨格自体は非常にシンプルです。

ある一人の少年が、変わった出来事を経験し、そして成長するという王道の物語。

つまりこれは、物語の原型とも言われる、いわゆる【行って帰ってくる物語】なんですね。

主人公が、ある辺境を旅し、そして、日常に帰ってくるというやつです。

たとえば、千と千尋の物語』バック・トゥ・ザ・フューチャー。または、『マッドマックス/怒りのデス・ロード』などがこの構造に当てはまります。

それぞれ、様々な要素があるため、全く別のお話しに思えるかもしれませんが、物語の骨格だけを取り出してみると全て同じ一つの物語なのです。

千と千尋〜』では千尋がトンネルの向こう側を旅して戻って来ますし、『バック・トゥ〜』では、マーティが過去を旅して戻ってきます。そして、『マッドマックス〜』では、フュリオサが理想郷探しの旅から戻ってきますね(怒りのデス・ロードにおける主人公はフュリオサです。本作におけるマックスは、あくまでお助けキャラですね)。

この様に、どの時代のどの作品にも見られるほどにポピュラーかつシンプルな物語構造です。

ですが、だからこそ、観る者の心を打つ傑作が生まれやすい物語構造でもあります。

きっと、あなたの大好きな一本の中にも骨格だけを取り出してみれば、【行って帰ってくる物語】があると思いますよ(そのうち、【行って帰ってくる物語】特集とかやってみてもいいかもしれませんね)。

本作でも、アオヤマくんがひと夏の奇妙な経験を経て日常に戻ってくることで、それまでのアオヤマくんにはなかった、ある考え方を手にします。

本作は、アオヤマくんがその考え方を手にするまでの過程を、時に丁寧に、そして、時にダイナミックに描いた作品ですね。

劇場用アニメならではのゴージャスで気持ちのいい作画

さて、言うまでもなく本作は、劇場用アニメ作品です。

つまりは、ある程度の潤沢な予算のもとに、大画面に耐え得る作画がギュッと詰まった作品なわけです。

アニメを観る面白さの中に、絵が動くと言う単純な快感があると思うのですが、本作でもそれは十二分に体験できます。

極めて細かく描写されながら、リアルとはちょっと違う、あたたかく美しい背景の数々。

吹き渡る風の表現、澄み渡る水の表現、そして何より、その中でいきいきと動くキャラクター達の躍動感。

そんな全てが、観ているだけで気持ちいい!

個人的には、これが名作アニメの条件の一つだと思うのですが、その意味で本作は、間違いなく素晴らしいクオリティです。

特に終盤。

実写では表現しようのない、ペンギン達の大スペクタクルシーンや、ペンギンを使った板野サーカス(※)は、映像的気持ちよさと美しさの極北です。

これだけでも、観てよかったと思える出来栄え!!


板野サーカス:日本を代表するアニメーターの一人である板野一郎氏が得意とする、三次元的高速戦闘描写の演出方法のことです。中でも、ミサイルやレーザービームなどが、【尾を引きながら】複雑に絡み合って飛んでいく描写が有名ですね。

夏の終わりの切なさ

そして、やはり夏アニメでおさえて欲しい一つの要素がこの、【夏の終わりの切なさ】なわけですが、その部分も本作はきっちりとおさえられています。

日本人にとって【夏】は、長いようで短い【夏休み】の思い出とセットだと思います。

そして、だからこそ、二度と戻らないその夏だけの経験と、その終わりを感じさせる夏の終わりに切なくなるのです。

楽しくて、騒々しかった最高の夏。

いつかは終わってしまう夏。

同じ夏は二度と来ないけど、でも、また新しい夏が来る。

希望もあるけど、ちょっぴり切ない。

本作のエンディングには、そんな、夏の終わりの希望ある切なさが、いっぱいに詰まっています

まとめ

ということで、ペンギン・ハイウェイのご紹介でした。

夏を舞台にしたアニメは傑作が多いわけですが、間違いなく、本作もその一例に数えられるべき傑作でした。

多分これ、夏が来る度に観たくなるんだろうなぁ……。

季節外れの一本ではありますが、過ぎゆく今年を振り返りつつ、本作で、夏を思い出してみてはいかが?!

※今回ご紹介した『ペンギン・ハイウェイ』は、2019/12/4現在、アマゾンプライムビデオにて無料配信中です。

 

ちなみに、『MIHOシネマ』さんでもあらすじやレビューが上がってます!

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