trifa’s grind house.

心に残った映画や海外ドラマの備忘録です。Amazonプライムが主になるかと。

26年におよぶ全ての呪縛に決着を。『シン・エヴァンゲリオン劇場版:‖』(ネタバレなし)

f:id:trifa:20210311044341j:plain


どうも、とりふぁです。

本日ご紹介する作品は、当時小学1年生だった私が、第一話の衝撃をいまだにまざまざと覚えている作品の完結編のご紹介になります。

そしてそれは、おそらく、日本中、いえ、世界中に同じ思いの人間がいることと思っています。

しかもその作品は、一度完結した作品でもあります。

しかし、その完結の仕方は、寧ろ、多くの謎と疑問、そして【呪縛】を我々ファンに与える終わり方でした。

そんな作品の、再びの完結編

果たして、我々の呪縛は解けるのか

それとも、再び呪縛の中に落とされるのか

では、ご紹介です。

(※いつも通りネタバレなしのご紹介になりますが、全く情報を入れたくないと言う方にとってはノイズになることもあるかと思いますので、そうした方は、本作観賞後にお読み頂ければ幸いです。また、今回は、明日以降早いうちにネタバレありの感想も上げる予定です)

 


『シン・エヴァンゲリオン劇場版:‖』のあらすじ

時に西暦2015年(※)。

人類は、使徒と呼ばれる謎の生命体による襲撃に怯えながら暮らしていた。

通常兵器の類が一切通用しない使徒に対し、唯一の有効な手段は、特務機関NERVが所有する、14歳の少年少女が駆る汎用人型決戦兵器エヴァンゲリオンのみ。

NERV日本支部の長たる碇ゲンドウを父に持つ少年、碇シンジは、ある日、ゲンドウにより、エヴァパイロットとして呼び出され、数々の死線を潜り抜けることになるも、紆余曲折と度重なる喪失の果てに、重度の鬱病のような状態になってしまう。

「もう何もしたくない」

そう言って無気力状態になるシンジであったが、しかし、運命は彼を待ってはくれなかった——。

「さようなら、すべてのエヴァンゲリオン

※新劇場版では、西暦についての言及はありません。

 

 

 


レビュー

日本アニメ業界が一丸となって生み出した世紀の一作

本作が連なる一連のエヴァンゲリオンシリーズ、すなわち新世紀エヴァンゲリオン(漫画版、旧劇場版含む)や、ヱヴァンゲリヲン新劇場版:(序、破、Q)が、日本アニメ界や、日本のポップカルチャー業界において、どれだけ巨大なコンテンツであるかという説明は、各所で嫌というほどされているので、当ブログでは、そこの部分は省いてご紹介しますが、しかしながら、さすがのエヴァブランドと言いますか、本作のスタッフロールは、もはや、日本アニメ界の見本市のようなことになっています。

主となる制作会社の【カラー】はもちろんのこと、日本アニメ界を引っ張り続けてきた【MAD HOUSE】や、『プロメア』天元突破グレンラガン【TRIGGER】、近年では鬼滅の刃の歴史的大ヒットが記憶に新しいUfotableに、進撃の巨人MAPPA、果ては特撮界の雄、円谷プロまで、本作は、とにかくもう日本にある映像制作系の会社は全部関わってるんじゃないかと言わんばかりの凄まじい制作体制で作られています。

まさに天才的マンパワーの集合体とも言えるような体制で作られた本作の【アニメとしてのクオリティ】は、正直言って、ちょっともうどうかしています(笑)

手描きアニメがもたらす動きの気持ちよさ、3DCGによるヌルヌルとした表現とカメラワーク、特撮的ダイナミズム、そういった映像作品の面白さが、全て高次元に融合し、画面内の情報量の多さと美しさは、アニメにおけるフェティッシュさの究極系と言った感じです。

天才達が、妥協一切なし、手加減全くなしでこだわりぬいた超絶クオリティのアニメ作品というだけで、本作は一見の価値ありです。

まず間違いなく、今後10~20年は、ここまでのオールスター体制によるアニメ作品は出てこないでしょうからね!

それでいて、今回は庵野監督が「実写的手法をアニメに取り入れたい」と考えた結果、通常、絵コンテを元に作り上げていくというアニメの制作過程を根本から見直し、バーチャルカメラによるビデオコンテをメインに作り上げていくというチャレンジングな試みも行われています。

これにより、作業効率は悪くなるものの、非常に現実感のある、なんなら、現実と地続きにあるアニメとでもいうような、美しくも自然な描写に成功しています。

特に、本作前半はその色が濃く、物語としては大人しいシークエンスながら、映像的フェティッシュさが随所に散りばめられた、気持ちのいいアニメになっていましたね。

それが一変し、中盤ではいつも以上にド迫力かつ、グワングワンとカメラが動きまくる凄まじいアクションシーン(これもビデオコンテをメインにしたからこそ出来たアクションでしょう)が連続し、そして、ラストの方では、非常にエヴァっぽい、前衛芸術的というか、実験的な映像描写に突入していきます。

静の表現動の表現、そして、実験的表現、その全てが異常なまでのクオリティでシームレスに繋がっていく様は、アニメの面白さと美しさに溢れています

 


人気声優陣による最後の熱演

そんなわけで、アニメとしての映像表現のクオリティはお墨付きなわけですが、もちろん、そこに命を吹き込む声優達の名演も凄まじいです。

まずは、主人公である碇シンジを演じた緒方恵美さん。

緒方さんといえばシンジというくらい、もう約束された名演(というか、エヴァの登場人物は、皆が皆、声優さんと紐付いてしまっていますよね笑)なわけですが、本作では、シンジの置かれる精神的状況の振れ幅が凄まじいため、より一層の演技の凄まじさに圧倒されます

綾波レイ役の林原めぐみさんは、いつもながらの安定感……と思いきや、同じキャラクターでありながら、全くの別人であるということを、声の演技一発で演じ切っており、その力量の尋常じゃなさに震えるほどです。

そして、式波・アスカ・ラングレー役の宮村優子さんは、個人的には本作で一番頑張った声優さんかなと思いました……! アスカの微妙な心の動きを完全に声に乗せる演技の数々には舌を巻きますし、また、クールな演技から、熱血的な叫びの演技まで、とにかく終始素晴らしかったです。

また、詳しくは触れませんが、碇ゲンドウ役の立木文彦さんの名演は、間違いなく本作の白眉でしょう。

その他、名前を言うだけでネタバレになりかねないキャラ達も、皆が皆、素晴らしかったです……。

特に、ある人物の成長っぷりを感じさせる声の演技には、最初の発声ひとつで「おぉ……」と唸ってしまったほどでした……!!!

日本最高の映像表現に、日本最高の演技が乗る

すなわち、最高ってことです(笑)

 

満を持して流れる定番楽曲

音楽使いも非常にエヴァらしく、既存楽曲の お遊び的引用や、林原めぐみさんが歌い上げる曲の美しくも皮肉な感じは健在です。

しかし、私が最も感動したのは、TVアニメ版からずっと使われ続けているエヴァと言えばコレ! とでも言うべき楽曲が、終盤のある場面で、重厚かつ豪華絢爛なオーケストラ版として流れ始めるところです。

その音色は、まさに26年間の集大成とでも言うべき重厚さを持って響くため、私は、ここでこそ、「ああ、これで終わりなんだな……」と深い感慨を抱きました。


意外なほどに(?)ストレートな感動作

これは、もしかすると若干ネタバレに足を踏み込んでいるかもしれませんが、本作、意外なほどにストレートな感動作となっています。

なんなら、今までのエヴァというのは、難解なキーワードや描写、様々な出典からの引用などを深読みし、考察するという楽しみ方がメインだったように思えますが、本作においては、考察の余地がない……というとかなり誤謬がありますし、新たな要素も多いので、いくらでも考察はできてしまうのですが、しかし、【考察することが枝葉になってしまう】ような、この上なくストレートな物語になっているのです。

「そこのところは、もういいじゃん」とでも言いますか。

少なくとも、私はもうエヴァについての考察等はしないと思います(笑)

というか、本作を見てもまだ考察を続けてしまうような方々(もちろんいると思いますし、それはそれでいいことだと思います)は、きっともう永遠に【エヴァの呪縛】から解かれることはないんだろうなぁと思いますね。

それほどの結末、決着が本作には用意されています。

エヴァンゲリオンという、ある種【終わらないと思われていた物語】が、ここまで綺麗に終わったというのは、素直に喜ばしいことですし、何より、26年もかけてこの結末にたどり着いたというのは、はっきり言って偉業だと思います。

ある歴史的一大コンテンツの、美しい結末を描き切ったというだけで、本作の価値は十二分にありますね。

 


まとめ

ということで、『シン・エヴァンゲリオン劇場版:‖』のご紹介でした。

本当に本当にいい作品ですし、何より制作に関わった人達、そして、ファン達が、時に喜び、時に悲しみ、時に怒り(笑)、共に過ごしたこの26年間は、全く無駄じゃなかった

少なくとも、そう思えるだけの素晴らしい完結編だと私は思います。

私の勝手な想像ですが、おそらく、コンテンツとしてのエヴァンゲリオンは、まだまだ続いていくでしょうし、エヴァの世界はこれからも拡大していくことでしょう。

けれど、本筋はこれで終わりであり、そして、本筋がこうしてこれ以上ないほどに綺麗に終わったからこそ、これから先もエヴァは続いていくことができる(実際、旧劇後に庵野監督は、「エヴァガンダムのようなコンテンツにしたい」と、他の方へエヴァを託そうとしたらしいのですが、何せあの終わり方であり、さらに、エヴァ庵野監督というイメージが強烈なため、誰も引き受けてくれなかったそうです。しかし、綺麗に完結した今であれば、今後、エヴァを引き継ぐクリエイターが出てくることもあるんじゃないかなと思いますし、おそらく、庵野監督からエヴァを開放するという、一種の巣立ち、子離れのような作品が本作だと思うのです)。

そんな風に私は思います。

 


すべてのエヴァンゲリオンにさようならを。

 


そして、すべてのエヴァンゲリオンにありがとうを。

 


26年間、お疲れ様でした——!!

 


※本日ご紹介した『シン・エヴァンゲリオン劇場版:‖』は、2020/3/11現在、全国の劇場にて上映中です。

また、Amazonプライムビデオでは、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:』全作品+『シン・エヴァンゲリオン劇場版:‖』の冒頭映像が無料公開中です。