軽妙洒脱な名作会話劇『おとなの事情』
どうも、trifaです。
11月最初にご紹介する作品はこちら、『おとなの事情』です。
普段、なかなか観る機会のないイタリア映画なのですが、なかなかどうして、笑えるけど笑えない、ワンシチュエーション・コメディの良作でした。
個人的には、しょっぱなから、11月期ベスト候補です!!
『おとなの事情/Perfetti sconosciuti』のあらすじ
月食の夜、友人同士7人が集まっての夕食会が開かれた。
集まったのは、ロッコの親友であるレレとコジモとペッペ。そして、レレの妻カルロッタと、コジモの妻ビアンカだ。
7人は、それぞれの近況など、他愛もない話で盛り上がり、和やかな時間が流れていた。
そんな中、エヴァが「今夜かかってきた電話や届いたメールの内容を全員で共有する」というゲームを提案する。
はじめは反対する者もいたが、「反対するということは、やましいことがあるのか?」という理論により、結局は、そのゲームをすることに。
こうして、ケータイという小さな機器をめぐる、人間関係崩壊の夜がはじまった——。
「ケータイは、生活の全てが記録されたブラックボックスよ。お互いの中身を見て、別れずにいられるかしら?」
レビュー
発想の勝利
あらすじを読んだだけでも、これからどんなことになるか想像すると、非常に面白そうですよね?
ケータイという、ちっぽけでありながら、もはや、我々の生活とは決して切り離せなくなっているものを【共有する】だけで、ここまで面白くも悲惨な状況を作り出している。
これはもう、発想の勝利としか言いようがありません。
逆転に次ぐ逆転、先の読めない小粋な会話劇
そんな面白い設定の中で繰り広げられるのは、イタリアらしい、軽妙洒脱で小粋な会話劇です。
前半では和やかなムードで会話が展開し、電話やメールの内容も上手くごまかされていきます。
しかし、ごまかしもだんだん効かなくなり、やがて爆発。パートナーや周りから非難されることに。
しかし、次の電話で攻守が逆転。
一転して攻める側に回ったり、結託するメンバーが変わったりと、目まぐるしく状況が変化していくのがおかしいのなんの(笑)
子供同士の喧嘩を治めるための大人の話し合いが、いつの間にか、大人同士の醜いマウンティング合戦になっていく『おとなのけんか』でも感じましたが、自分には関係のない、他人のどうでもいい争いって、なんでこんなに面白いんでしょうね?
しかし、本作の場合、後半、それまでの人間関係がグッチャグチャになる辺りになると、もう笑ってもいられなくなるのが、『おとなのけんか』とは違うところですね。
本作では、笑える悲惨さを超えて、本当に悲惨な状況になっていきます。
ツイストの効いた大人な着地
そんな本作ですが、ラストシーンは、この手の映画には意外なほどのツイストが加えられており、正直、自分はラストシーンは二度見返して、ようやく状況を理解しました。
詳しくは省きますが、是非、ラストシーンのビアンカの髪型と口紅に注目してください。
ラストシーンの意味がわかった時、なんと大人な着地なのだろうと感心してしまいました。
しかし、本作中で最も常識的に描かれているある人物にとっては、この着地が後に悲劇を呼びそうで、その人物を好ましく思っている私としては、その点だけは気がかりです……。
まとめ
ということで、イタリアのワンシチュエーションコメディ『おとなの事情』のご紹介でした。
個人的には、こんなにお洒落で大人な名作に出会えたことに感謝したくなるほど、お気に入りの作品になりました。
イタリア映画、あなどれないですね!!
※今回ご紹介した『おとなの事情』は、2019/11/1現在、アマゾンプライムにて無料配信中です。