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ジェームズ・ガン脚本・制作、『サラリーマン・バトルロワイヤル』

どうも、trifaです。

皆さん、MCU(マーヴェル・シネマティック・ユニバース。いわゆる、アヴェンジャーズの系統です)はお好きですか?

世界観を共有する、同時多発的かつ連続的な作品を数多く公開し、やがて、一つの作品へと合流させるという、アメコミ的な発想で、ユニバースという概念を映画業界に根付かせたシリーズですね。

最近では、フランシス・フォード・コッポラや、マーティン・スコセッシをはじめとする、古くから業界の第一線で活躍し続けている大御所達がMCUを批判するという事態が大きく取り沙汰されてもいます。

その問題について、個人的にはどっちの言い分もある程度分かるなぁと思っています。

MCUは好きですし、11年間23作品という膨大な期間、作品数をもって一つの物語を語ったという偉業は、今後、映画史の伝説と化していくでしょうし、その全てをまとめ上げたアベンジャーズ/インフィニティ・ウォー&エンド・ゲーム』の二部作による感動と、そこまでに至る映画体験は、間違いなく唯一無二のものでした。

しかしながら、このシリーズの流行により、「なんでもかんでもユニバース化してしまえ!」という流れができかけたこと(※1)は正直どうかと思いましたし、また、それ以上に、MCUの大ヒットにより、映画業界の予算水準が爆発的に上がってしまい、中規模な作品や、マニア向けの作品に予算が出づらいという状況が生まれてしまったのは、由々しき事態でしょう。

とはいえ、MCUが大衆向けだからといって、コッポラやスコセッシの作る映画に比べて、映画として劣っているかと言われれば、そんなことはありません。特に、キャプテン・アメリカの三部作や、『ブラック・パンサー』などは、エンターテインメントとして一級であると同時に、現代社会に存在する問題を浮き彫りにしている作品でもあります。

ですから、「酷い作品だ」と言われるのは心外というのも分かるわけです。

要するにこれは、【映画を芸術】ととらえるか、【映画をエンタメ】ととらえるかの問題ですよね。

その上で、私としては、【どっちも映画】というスタンスです(予算問題については、なんとか解決法を見つけて欲しいですが)。

さて、前置きが随分と長くなってしまいましたが、今回は、そんなMCU作品群の中でも映画ファンからの支持が厚い、ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー(GOTG)』シリーズを手がけた、ジェームズ・ガン監督が、『GOTG』の一作目から二作目の間に撮った作品、『サラリーマン・バトルロワイヤル』のご紹介です。

 
※1:【なんでもかんでもユニバース】

アメコミの老舗、DCによるDCエクステンデッドユニバースや、ユニバーサル・ピクチャーズによる、古典的モンスター達の復活をかけたダーク・ユニバース。そして、ゴジラキングコングなどの怪獣映画をユニバース化するモンスターバースなどがありますが、ぶっちゃけ、成功しているのはMCUだけですね。特に、ダーク・ユニバースは、一作目がまさかの大ゴケで、一作目にして企画自体がご破算になってしまっています。個人的には、モンスターバースは期待しても良さそうかなとは思っています。

 

『サラリーマン・バトルロワイヤル/The Belko Experiment』のあらすじ

世界中に支部を持つ、アメリカの非営利団体BELKO。

そのコロンビア支部で働く社員達には、現地で多発する誘拐事件への対策として、外科手術による体内への発信器装着が義務付けられていた。

非常に治安の悪い地域にありながらも、アメリカ的な風通しの良さを誇る社内では、今日も従業員達がそれぞれの業務に従事していた。

しかし、突如として建物全体が閉鎖されたことにより、事態は一変する。

そして、異常事態に慌てふためく社内で、ある一つのアナウンスが放送されるのだった——。

「今から30分以内に、手段を問わず、同僚3名を殺害せよ。さもなくば、同僚6名が死ぬことになる」

 

レビュー

ジェームズ・ガン脚本・制作

前述した通り、本作は、『GOTG』シリーズのジェームズ・ガン脚本・制作の作品です。

『GOTG』は、アレハンドロ・ホドロフスキー(※2)的な極彩色のデザイン感覚を持つスペース・オペラ(※3)を現代的にアレンジし、さらに、スペース・オペラBGMとして、既存のポップスやロックを起用するという斬新な要素を二つも含みながら、そのどちらも大成功している傑作でした。

特に、ジェームズ・ガン的な音楽使い(※4)は、その後の映画界では定番とも言える演出法になりました。

そんな傑作を作り上げたガン監督が、『GOTG』の次に手がけたのが、本作です。

あんな、ブロックバスター超大作を作った監督にしては地味、かつニッチな作品だなぁと思うかもしれませんね。

しかしながら、ガン監督は、もともと、『悪魔の毒々〜』シリーズで知られる、トロマ・エンターテインメントという、非常に低予算かつ悪趣味でニッチな、B級、Z級作品を手がける映画製作会社出身なのです。

つまり、『GOTG』の方が異質で、本来の素質はコッチということですね。

そんな監督が、『GOTG』という大作のあとに、自身の原点とも言える作品を手がけたというのは、一種の息抜きというのもあったのかもしれません(笑)

『アイアンマン』シリーズのジョン・ファブロー監督も、アイアンマン2の後、「ブロックバスターはもうこりごり」と言って、自身がコントロールしうる予算と体制で、『シェフ〜三ツ星フードトラック始めました〜』(これまたハッピーな気分になれる傑作です。未見の方は、ぜひ!)を作っていますし、やはり、MCUほどの大作(しかも、他作品との整合性も求められる)を作るのは、色々と気苦労があるのでしょうね。


※2:【アレハンドロ・ホドロフスキー

独特なビジュアルセンスで知られる、チリ出身の映画監督であり、アーティスト。『DUNE』という超大作スペース・オペラを制作する予定だったのですが、途中で頓挫。しかしながら、未完であるにも関わらず、その圧倒的なビジュアルセンスは、後の作品に多大な影響を与えました

※3:【スペース・オペラ

宇宙を股にかけた壮大な冒険活劇のことです。最も有名な作品は、スター・ウォーズですね。

※4:【ジェームズ・ガン的な音楽使い】

一見、ミスマッチとも思えるスタンダード・ナンバーをあえてゲキ版として使用する音楽使いのこと。ミスマッチと見せかけておいて、実は歌詞の内容が映画の展開と呼応しているというのが本来の姿。しかしかながら、そこまで出来ているのは、ごく僅かですね。

 

小ぶりな佳作

本作ですが、ストーリーに強烈なツイストがあるというわけではありませんし(というか、後半の展開は、結局それかい! と思うばかりでした。ラストのスカッとする展開は燃えましたが)、特に印象的なシーンがあるわけでもありません。

しかしながら、必要十分なキャストや演出で、最後まで普通に観れてしまう作品だと思いました。

まさかの配役・まさかの展開

個人的に驚いたのが、ウォーキング・デッドメルル役や、『GOTG』ヨンドゥー役などで印象深く、また、ワイルド・スピードシリーズの次回作への出演も決まった、マイケル・ルーカーが出ていることです。

個人的に大好きな俳優さんですし、本作のオープニングでは、画面のセンターにいたので、「きっと、コイツがラスボスだ! そうじゃなくても、引っ掻き回すはずだ!!」と期待してしまいました。

しかも、本編が始まると、彼の相方として、ダークナイトでのジョーカー信者役で独特の雰囲気を醸し出し、アントマンシリーズでも、おバカチームの一人として、なんとも言えない印象を残した、デヴィッド・ダストマルチャンまで出ているではないですか!

この二人がコンビなら、きっと凄いことをやらかしてくれるだろうなぁと思っていたら……まさかのあんな役どころとは(笑)

いい意味で期待を裏切られました。

その二人以外にも、物語上でキーになってきそうな描き方をされているキャラクターに、意外な展開が待ち受けているというのが本作の特徴です。

大枠では話が読めるのですが、細かな展開は意外なものが多く、その度に、「えーッ!!」という驚きと共に、大いに笑わせてもらいました。

コメディというわけではないので、物語上は悲惨な出来事が展開しているのですが、あまりのことに笑ってしまう。この感覚は、やはりトロマ映画出身監督だからこそでしょう。

 

まとめ

そんなわけで、『サラリーマン・バトルロワイヤル』のご紹介でした。

正直、あんまり過ぎる邦題だと思いますが、中身はなかなかどうして楽しい作品でした。

傑作、名作ではありませんが、息抜きにパパッと観るのにはオススメできる、小粒な佳作といった印象の本作。

度肝を抜くどんでん返しや、バトル・ロワイヤルの悲痛さはありませんが、「そこそこ血の出る面白い作品ないかなぁ〜」って感じの時にオススメです(笑)

さて、ジェームズ・ガン監督といえば、次回作の『ブライトバーン』が、「もしも、神にも等しい力を持つスーパーマンが、極悪非道なモンスターだったら?」というテーマで、なかなか面白そうですね。

その後も、スーサイド・スクワッドの新作や、大本命、ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシーvol.3(仮)』と、立て続けに注目作が続きますし、間違いなく、今、注目すべき監督の一人です。

そんな監督が、箸休め的に撮った(と勝手に思ってます笑)本作、ぜひぜひ、ご覧ください!

 

※今回ご紹介した『サラリーマン・バトルロワイヤル』は、2019/10/29現在、アマゾンプライムにて無料配信中です。