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理論武装された【愛】の物語『インターステラー』

どうも、とりふぁです。

映画好きなんてやってると、この監督の作品はついつい観ちゃうんだよなっていう監督が何人かはいると思います。

私の場合でいうと、クエンティン・タランティーノ、故トニー・スコットロバート・ロドリゲス、そして、クリストファー・ノーランあたりですかね。

今回ご紹介するのは、そんな監督の一人であるクリストファー・ノーランによるSF作品、インターステラーです。

色々と小難しい映画を撮る監督の小難しいSFと考えられがちな本作ですが、本筋だけを辿れば、そう難解なお話でもないですよ……!

 

 


インターステラー』のあらすじ

近未来の地球。

度重なる異常気象や、植物の大量死により、人類は、ゆるやかに自らの文明に終止符を打とうとしていた。

そんな世界で、元宇宙飛行士のクーパーは、二人の子供や義父とともに、農場を営み、日々を送っている。

ある日、クーパーの娘であるマーフィは、自室の本棚から自然に本が落ちるという異常現象に遭遇する。

それを幽霊の仕業と信じ、研究を続けるマーフィだったが、思うような成果は出ていない。

しかし、その現象をクーパーが見かけたことにより、事態は一変することになる。

クーパー曰く、それは、重力波によるメッセージだとのこと。

かくして、彼らはそのメッセージに導かれ、自らの人生、そして、人類の命運までも左右する、壮大なる旅へ出ることとなる——。

「俺じゃなかったんだ——!」

 

 

レビュー

変わった成り立ちを持つ作品

本作は、ちょっと面白い成り立ちの上に存在している作品です。

と、いうのも、この映画のそもそものきっかけになったのは、天文学者であるカール・セーガンが、『コンタクト』というSF小説(映画化もされています)を書く際、「いかに相対性理論に忠実に書くか」ということを主眼に置いた上で、人間が通過可能なワームホール(多くのSF作品に登場するワームホールは、実は自然界に存在すると仮定した場合、量子レベルの極小サイズでしか存在できず、しかも、一瞬で消滅してしまうと考えられています)についてのアドバイスを、著名な理論物理学者である、キップ・ソーンに求めたことにあります。

 

相談を受けたキップは、そのことについての研究に没頭し、十年以上の時をかけ、一冊の本にまとめるまでに至りました。

そして、そんなキップが、この理論を基に一般にも分かりやすい作品を作りたいと考えたことが、本作の成り立ちです。

つまり、語りたい物語があって作られた作品ではなく、語りたい理論、しかもれっきとした物理学者の理論がきっかけになって生み出された映画なわけですね。

そのため、本作で登場するワームホールブラックホールの描写は、科学的考証に基づいた、非常に正確な描写となっているわけです(もっとも、あくまでもその部分についての科学考証が正しいというだけであって、本作の全てが科学的に正しいというわけではありません)。

きっかけがきっかけだけに、その描写にかける情熱も凄まじく、ワームホールブラックホールの描写を担当したCGスタジオ【DNEG(ダブルネガティブ)】は、キップの用意したワームホールブラックホールに関する膨大な数式を解き明かし、その解を基にCGを作成しました。

それほどの労力と情熱により生み出された【正しいワームホール【正しいブラックホールの姿は、その正しさのみならず、美しさにおいても、観る者に深い印象を与えるものとなりました。

また、本作終盤で訪れる【ある場所】についての描写も、美しさおよび、【◯◯を〜〜的に扱う】表現としての説得力に、個人的には膝を叩くことしきりでした。

こうした、美しくも正しい描写の数々は、本作の大きな魅力の一つとなっていると思います。

とはいえ、こういった成り立ちや、科学考証ゆえに、難しい作品なのかというと、そんなことは全然ないというのが、私の感想です。

確かに、様々に理論武装されている上に、科学的なことについては、端的かつ最低限の説明だけで済まされてしまうのですが、それらは枝葉に過ぎず、本作の本質は、至極シンプルなものだと思います。

 


愛の物語

では、本作の本質は何か。

その問いに対する私の答えは非常にシンプルで、【愛】の一言だと思います。

本作は、終焉を迎えようとしている人類を救うため、遥かなる宇宙へ飛び立つというプロットですが、しかし、作中でも言及されている通り、人類は【種の保存のために行動できない】生物です。

人類は、【知恵】という大きな武器を持ったがゆえに、【種の保存】という生物としての基本原則からは外れてしまいました(聖書的にいうならば、知恵の樹の実を食べたがゆえに、永遠の命を失ったというところですかね)。

そのため、人類全体に危機が訪れたとしても、人類は、人類という種を守るために個の命を投げ出すということはできないのです(それに対して、他の生物、例えばミツバチなどは、自らの種に危険を感じると、命と引き換えに針で攻撃をしたり、峰球を作って外敵を倒そうとしたりします)。

では、人類は何のために行動し、何のためならば命すら投げ出すことができるのか。

それは、【愛】のために他なりません

【恋愛】【友愛】【家族愛】【兄弟愛】【姉妹愛】【隣人愛】【自己愛】などなど、愛には様々な種類がありますが、それらのためになら、人類は命を投げ出すことができるのです。

人類は、【種の保存】という合理的かつ無機的な行動理由を失った代わりに、【愛】という非合理的かつ詩的な行動理由を手に入れた種なのです。

そして【愛】は、時に、常識や物理法則をも超越した、奇跡とも呼べる効果をもたらすのです。

……なんだか話がスピリチュアルな方向に傾いてきましたね(笑)

ですが、要するに本作はそういう話しなのです。

様々な考証や理論武装の上に成り立っている作品ですが、いえ、だからこそ、それらをねじ伏せる【愛】を描く作品なのですね。

そう、本作は非常にシンプルで、そして普遍的な【愛】の物語なのです。

 


クリストファー・ノーランという監督

さて、最後に本作自体の紹介からは少し外れますが、クリストファー・ノーランという監督について、私なりの考えを書いておこうと思います。

というのも、最近、クリストファー・ノーラン監督作を立て続けに観て、少し気付いたことがあるのです。

それは、おそらく彼が一貫して【嘘】についての物語を描いているのではないか、ということです(もちろん、その他のテーマもあるとは思います)。

一応、彼の監督作はフォロウィングダンケルクを除いて全て観ているのですが、その全てに共通しているのが、【嘘】だと思うんですよね。

 

詳しくは省きますが、彼の手掛ける作品は、何らかの嘘が発生する、あるいはその嘘が暴かれることで大きく動き出す作品ばかりなんですよね。

そして、大抵、その嘘によってとんでもない事態が引き起こされるわけですが、しかし、同時に、【その嘘がなければ希望が生まれることもなかった】というような展開、結論になることが多いように感じるのです。

そのため、恐らく彼は、【嘘】というものが持つ力や可能性を恐れ、しかし、同時に信じてもいる監督なのではないかなぁと思ったりします。

そもそも、【映画】自体が巨大な【嘘】であり、それにより【希望】も【絶望】を生む装置でもありますしね。

今回ご紹介したインターステラーでも、やはり、ある嘘が物語を大きく動かすことになりますので、そんなところにも注目して頂ければと思います。

 


まとめ

そんなわけで、インターステラーのご紹介でした。

正直、ノーラン監督作はどれもこれも生涯ベスト級に好きなのですが、中でも本作は個人的には非常に刺さりまくる一本でした。

ハードSF然としているルックや宣伝ゆえに敬遠している方もいるとは思います(ですが、だからこそ、ハードSFを期待したファンには肩透かしだったりもするのだと思います)が、しかし、ノーランは本作を【ファミリームービー】と位置付けていますし、実際、わたしもそうだと思います。

ゆえに、小難しい科学理論は、いったん脇へ置いておいて、素直な愛の物語として観てみるのも一興です。

その上で、本作で語られる科学理論に興味を持ったら、調べるなり、本を読むなりしても面白いでしょう。

私の場合は、非常に浅い知識ではありますが、本作で語られているような理論は大体知っていた(分かっているわけではありません汗)のですんなり観れましたが、そうではないうちの妻も感動して観ていたので、そうした知識は必須ではないと思います。

様々に理論武装した上で、理論を超越する【愛】を語る

パッと見は取っ付きづらく見えるかもしれませんが、本作は、そんな泥臭い作品なんです(笑)

あまり身構えず、「そんなもんか」くらいな感じでご覧下さい。

おそらく、涙腺を刺激する【何か】があると思います。

ちなみに私は、中盤のとある展開で毎回号泣してしまいます……。

……あんなの、あんまりだよ……。

とにもかくにも、オススメの一本です!

 

最高の女編集長による最強の映画メディア『MIHOシネマ』さんの記事はこちら↓

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