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気を付けろ! それはきっとあなたのもとへも……『来る』

どうも、とりふぁです。

最近は、次にレビューする作品をTwitterアンケートで募集して決めているのですが、なんでみんなそんなにホラー好きなの!?(笑)というくらい、ホラー系が続きますね(^◇^;)

ま、夏だからいっか(笑)

というわけで、今回はジャパニーズホラー作品、『来る』のご紹介です。

しかしながら、本作はジャパニーズホラー特有のゾゾっとするホラー感はありながらも、全体的にはかなりエンタメ寄りな作品であり、特に、超絶怒涛としか言いようのないラストの展開は、ある種の祭り感すらあります(笑)

では、ご紹介です。

 

 

 

 
『来る』のあらすじ

田原秀樹は、公私ともに順風満帆。

結婚もし、子供も生まれ、イクメンブログも大人気。

まさに、幸せを絵に描いたような理想の人生を歩んでいた。

——本当に?

「秀樹も呼ばれるで。だってアンタ、嘘つきやもん」

 


レビュー

ホラー映画ではない

冒頭にて本作をジャパニーズホラー作品と紹介しましたが、本作は厳密にはその枠ではないと思いますし、中島哲也監督自身、とあるインタビューにて「ホラー映画を作った感覚はない」と語っていました。

というのも、中島監督は、映画を撮る際に、ジャンルやストーリーよりも、【人間の面白さ】を撮りたいという気持ちが強いらしく、いい意味で、ジャンルへのこだわりが一切ないようなんですね。

そんな監督が、恐怖の本質とは何かを考え抜いて書かれた怪奇小説『ぼぎわんが、来る』を原作に作り上げたのが本作です。

 

そのため、本作は、まさにジャンルの枠に囚われない、自由でパワフル、唯一無二の作品になったのでしょう。

本作は、それほどまでにブッ飛んでいます(笑)

しかし、では怖くないのかと言われればそんなことは全くなく、特に、ある種の人間にとっては、これ以上ないほどに身につまされる恐ろしさのある作品だと思います。

 


全ての人間が抱えるものの恐ろしさ

本作の恐ろしさ、それは、襲い来る怪奇現象や怨霊、怪物や、恐怖に慄く人々の態度などではなく、誰もが抱えているであろう【心の闇】と、【その闇をどう扱うのか】という、まさに、我々の人生に常に付き纏うものの怖さです。

あなたは、SNSや他人との関係の中で、架空の人生や人格を演じてはいませんか?

そして、それに呆けて、現実を見ないようにしていませんか?

もちろん、そうした息抜きも人生には必要です。

しかし、いつしか、息抜きばかりに傾倒して、本当の人生や、本物の人格が抱える【嫌な部分】=【闇】を放置してはいませんか?

どれだけ見ないようにしても、その【闇】はあなたの横に付き纏っていますし、無視し続けることはできません。

そしてそれは、いつか必ず、決定的な瞬間を伴って、あなたの目の前へやって【来る】のです。

本作で描き出されるのは、そういう恐ろしさであり、だからこそ、見て見ぬフリが日常となってしまっている人には、これ以上ないほどに恐ろしい作品になっているのです。

ああ、怖ッ!(笑)

 


ケレン溢れる除霊祭!

本作はかなり明確な三部構成(それこそ、※序破急といってもいいほどに)になっています。

そして、前述したような恐ろしい描写は、前半二部のお話しです。

では、ラストとなる第三部では何が描かれるのかというと、それはもう、ただただ圧倒的なまでの祭

前半二部で描かれてきた恐ろしい出来事が呼び込んでしまった【何か】を、松たか子演じるカリスマ除霊師が祓(はらい)落とす展開になっていくわけですが、もうこのシークエンスが楽しいのなんのって!!

詳しくは省きますが、邦画史上最大の除霊シーンであることは間違いありません(笑)

ここへ来て、ようやくケレン溢れる中島節が全開になり、中島監督らしいアッパーでドラッギーなクライマックスを迎えるのです。

この極端な構成こそが、本作を唯一無二のエンタメにしていることは疑いようがありませんね。

 


序破急:能における三幕構成の基本理念。【序】で物語が始まり、【破】で物語が一気に展開し、【急】でさらに急転しつつ、サッと物語が終わるというような構成ですね。よく聞く【起承転結】より、さらに劇的かつスピーディに展開していくイメージです。

 


名キャラの嵐! いい意味で漫画的な登場人物達

見所たっぷりな本作ではありますが、個人的に最も気に入ったのは、良い意味で漫画的な登場人物達です。

岡田准一演じる野崎は、ストーリーテラー的な役割のキャラクターですが、そのルーズなビジュアルや、気怠そうな演技に、岡田准一の精悍さがいい具合に混ざり合い、ダーティなカッコ良さが爆発しています。

また、小松菜奈演じる、キャバ嬢で霊媒師な真琴は、学がないために、側からは堕落しているように見えるものの、根は純粋で優しさ溢れるいい娘なんだなぁというのがヒシヒシと感じられる名演! 学生時代に、いたなぁ、こういう娘……(遠い目

あるいは、松たか子演じるカリスマ除霊師である琴子は、漫画的キャラクターの溢れる本作にあって、圧倒的な存在感と強キャラ感が凄まじいです。にも関わらず、どこかにいるかも……と思わせる説得力は、松たか子の演技力あったればこそ、ですね。

そして、本作を観た誰もが腰を抜かすであろう、柴田理恵演じる霊媒師、セツ子のカッコ良さよ……!!!! 柴田理恵がカッコいい映画は、多分、後にも先にも本作のみにして、そして、最高傑作でしょう(笑)出演時間は短いながら、本作の白眉をかっさらい、強烈な印象を残すキャラになっています。

その他にも、妻夫木聡演じる秀樹の薄っぺらさや、黒木華演じる香奈の危うさなどなど、【人間の面白さを撮りたい】という中島監督の言葉通りに、どの人物も一人残らず多面的で、まさに【人間エンタメ】とでも言いたいくらいです。

とにかくキャラがいい! それが本作の最も面白い点だと思いますね。

 


まとめ

ということで、『来る』のご紹介でした。

ハイレベルな人間ドラマ×ホラー×エンタメという、なかなか稀有な一作で、問答無用に楽しい作品に仕上がっていると思います。

しかし、その一方で、誰もが、ほんのちょっとしたことの積み重ねの末に、本作で描かれたような阿鼻叫喚の中に叩き落とされる可能性はあると私は思います。

そういう意味では、教訓的な作品と呼ぶことができるかもしれませんね。

唯一無二のホラーエンタメであり、ふと、自分の人生に寄り添う闇を見つめるキッカケにもなる、なかなかどうして得難い作品です。

好みはかなり分かれる作品とは思いますが、ジャパニーズホラーエンタメの、ある意味での到達点でもあると思うので、是非ともご覧下さい!

 


※本日ご紹介した『来る』は、2020/8/26現在、30日間の無料体験ができるアマゾンプライムビデオにて無料配信中です。

 

 


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