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企業の闇を照らす、曲者揃いの顔相撲『七つの会議』

どうも、とりふぁです。

ここ最近流行りの企業エンタメと言えば、やはり、池井戸潤原作の諸々だと思います。

下町ロケット空飛ぶタイヤルーズヴェルト・ゲーム』に、半沢直樹などなどなどなど。

 

ドラマ化や映画化された作品だけでも、かなりな数がありますよね。

と言っても、個人的には、なかなか興味の湧かないジャンルでもあったので、実は、今まで池井戸潤作品に触れたことがなかったんです(^◇^;)

しかし、今回ご紹介する『七つの会議』については、自分が日頃から聴いているTBSラジオで連日CMが挟み込まれていたり、敬愛する宇多丸さんがモノマネしていたり、ちょっと気になる作品ではありました。

それが、この度、アマゾンプライムビデオに追加されたので、早速観てみた次第です。

なるほど、これは面白い……!

 

 

 


『七つの会議』のあらすじ

中堅電機メーカーの東京建電

その営業課は、業績の良い一課と、うだつの上がらない二課との間で、明確な差が出ていた。

そんな中、エースである一課にあって、唯一のお荷物社員である【居眠り八角こと八角民夫が一家の大黒柱である営業課長、坂戸パワハラで訴えるという事件が発生する。

ぐうたら社員が、敏腕課長を訴えたということで、どうせ黙殺されるだろうと考える周囲の者達であったが、その予想に反し、坂戸は左遷されてしまう

さらに、その後も、八角の周りでは不審な出来事が頻発していく——。

「人間ってのは愚かな生き物ですからねぇ。

 特に日本の場合、

 会社の常識が世間の常識よりも大事になってしまう」

 

 


味が濃い! 顔相撲大会開催!!

本作でまず思うことは、とにかく役者の味が濃いということでしょう(笑)

しかも、野村萬斎香川照之加賀丈史北大路欣也など、とにかく顔の演技が素晴らしい方ばかり!!

故に、ほぼほぼ全編が濃い顔芸を得意とする役者さん同士の顔相撲大会と化しています(笑)

顔芸以外の演技も非常に味が濃く、はっきり言って現実的なリアルさは皆無ですし、味が濃いゆえに、人も選ぶ作品だとは思います。

正直、自分も苦手なタイプの演出方法なのですが、しかし、観終わってみれば、本作においては、コレでいいというか、コレが正解なのかなと感じました。

画が地味になりがちな企業モノにおいて、かなり反則気味とはいえ、演者や演技の味を濃くし、画面の圧を高めたことが、画の派手さや、映画自体の面白さにきちんと繋がっています

全部の映画がこうなってしまったら嫌ですが、たまにこういう作品があるのは、いいかもしれませんね。

ちなみに、そんな顔相撲大会において、個人的には野村萬斎のカッコ良さと、朝倉あきの可愛さが群を抜いてたかなと思います(笑)

香川照之の百面相な演技も、キャラクターに深みを与えていて、素晴らしかったです。

 


誰も死ななくともミステリーは面白くできるという一例

そんな本作ですが、物語としては、視点が次々と変わる、群像劇形式で進むミステリーになっています。

ミステリーといっても、一企業の一社員にまつわるものため、人死にや、不可解なトリックなどは特にありません

それでも、面白い

一人のぐうたら社員に端を発する些細な謎が、徐々にまた別の謎を生み、その謎が膨らんだり増殖したりしつつ、最終的には、それらが全て一本の線となり、やがては日本企業全体を覆う闇を照らし出していくという謎の連なりは、ミステリーとして無類に面白かったです。

企業ミステリーに触れたことがなかった私としては、このようなミステリーの在り方があるのかと、新鮮な驚きがありました。

しかも、そこそこの規模の会社に勤めたことがあれば、「なんであの人、ああいう待遇が許されてるの?」とか思うことって一度はあると思うんですけど、まさにそここそが肝になってるのが「わかるわかる!」という感じで、なお面白かったですね。

もっとも、ミステリーに集中し過ぎて、「この人ら、仕事してんの?」と思わないでもありませんが(笑)

 


日本企業に巣食う闇を抉るラストシークエンス

ネタバレになるため明言は避けますが、本作が最終的に抉り出すのは、日本企業の闇、いえ、日本人の病理とも言える、ある一つの大問題です。

そしてそれは、おそらく誰もが薄々は感じていながら、でも、口には出さないことです。

しかし、企業にまつわるほとんど全ての問題や事件の大本は、まず間違いなくコレでしょう。

そういう本質を抉り出して、八角自ら、我々鑑賞者にポンっと手渡してくる

 

 

「で、あなたはどうするの?」

 


と。

本作は、そういう映画です。

そこに至るまでのエンタメとしても、もちろん無心で楽しませてもらいましたが、この切れ味鋭いラストシークエンスを観た時、私は、本作を「傑作だ」と結論付けました。

アレをやられたら、一サラリーマンとして、拍手せざるを得ません

お見事!

 


まとめ

ということで、『七つの会議』のご紹介でした。

企業エンタメというのをしっかり観たのは初めてでしたが、なるほど、コレは面白いですね。

特に、ミステリー部分はかなり面白く観てしまいました。

それでいて、極めて社会的な問題をこちらへ投げ返してくる、あのラスト。

個人的には、全面降伏です(笑)

企業で働く全ての人、あるいは、これから企業で働こうと考えている人は、観ておいて損はないと思います。

いやぁ、池井戸潤、流行るわけだわ!!

 


※本日ご紹介した『七つの会議』は、2020/9/2現在、アマゾンプライムビデオにて無料配信中です。

 


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