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マクドナルド非公認の創業秘話『ファウンダー/ハンバーガー帝国のヒミツ』

どうも、とりふぁです。

皆さん、普段、マクドナルドって使いますか?

私は以前はそれほどでもなかったのですが、今は、職場の行動圏内にあるので、ちょくちょく利用させてもらってます。

安価にササっと食べられるので、時間がない時も便利なんですよね。

そんなマクドナルドについて、

マクドナルドより美味いハンバーガーは誰でも作れるが、マクドナルドより上手いシステムは誰にも作れない」

というような格言があるのをご存知ですか?

そう、マクドナルドの凄さは、ハンバーガーの美味しさではなく、その提供システムやフランチャイズシステムの凄さなんです。

そりゃまぁ、味で言えば、モスバーガーバーガーキングの方がはるかに美味しいですもんね。

にも関わらず、街中にあふれているのは、マクドナルド。

それはなぜかと言えば、マクドナルドが飲食チェーンの形態をとった不動産業だからなんですね。

どういうことかをざっくりと説明すると、マクドナルドは、まず土地を押さえ、その上で、フランチャイズに参加したいオーナーに、その土地と店舗を貸すことで利益を上げているということなんです。

今回ご紹介する『ファウンダー/ハンバーガー帝国のヒミツ』は、そんなマクドナルドの創業秘話についてを描いた作品です。

しかし、本作はマクドナルドの公認を得ていません、それは、なぜなのでしょうか……?

 

 

 

『ファウンダー/ハンバーガー帝国のヒミツ』のあらすじ

1954年、アメリカ。

5本のミルクシェイクを同時に作ることのできるシェイカーの営業を行ないながら、アメリカ全土を渡り歩く男、レイ・クロック。

しかし、その売れ行きはかんばしくなく、事業は鳴かず飛ばず

思えば、今までに手掛けてきた、どの事業もそうだった。

いつか大穴を当ててやる。

そんな野望を抱く彼のもとに、ある日、シェイカーを8つも注文する電話がかかってくる。

いぶかしみつつも、そこにビジネスチャンスの匂いを嗅ぎつけた彼はルート66を疾走し、カリフォルニア州、サンバーナーディーノへと辿り着く。

そこで彼が出会ったのは、驚くべき提供システムを持つハンバーガーレストラン【マクドナルド】と、そのシステムをたった二人で作り上げた天才、ディックとマックのマクドナルド兄弟だった——。

「なんで俺がお前達の店を真似しなかったか分かるか? それはな——」

 

レビュー

誰もが知る店の真実の創業秘話

冒頭にも書いた通り、本作は、今や、世界中の誰もが知る飲食チェーンであり、なんなら、店の看板メニュー【ビッグマック】が世界の経済指数用語の一つにもなっているという、名実ともに世界最強の企業の一つ、マクドナルド】の創業秘話を描いた物語です。

さて、本作のプロデューサーであり発起人の、ドン・ハンドフィールドは、ふと、マクドナルドの創業者の名前が、レイ・【クロック】であることに疑問を持ちました。

なぜなら、店名のマクドナルドとは、【McDonald’s=マクドナルドさんの】という意味の言葉だからです。

マクドナルドさんのお店なのに、創業者がマクドナルドさんではない。

この矛盾に興味を持ったハンドフィールドは、レイ・クロックの自伝をもとに、独自の調査を進め、ついに、マクドナルドさん(正確にいうと、そのお孫さん)へと辿り着き、そこから本作の製作がスタートしたのです。

結論から言うと、現在の【マクドナルド】はマクドナルド兄弟という人物が原型を生み出した後、レイ・クロックという一人のビジネスマンによって、その【名前】と【システム】を買い取られた結果の産物でした。

その辺りの事情は、レイ・クロックの自伝にも書かれており、その中では、比較的穏当に権利の売り渡しが行われたかのように書かれているそうです(未読のため、聞き齧った知識です。あしからず)。

しかし、マクドナルド兄弟のお孫さんから語られた【真実】は、全く違うものでした。

そして本作は、レイ・クロックの自伝をベースにしつつも、【お孫さんの語った真実を含めて劇映画化された作品】です。

その作品が、マクドナルド非公認である】ということ。

このことから、その真実がいかなるものかは……何をか言わんや、と言ったところです。

マクドナルド兄弟がシステムを作り上げていく面白さ

本作で私が個人的に最も好きなシークエンスは、前半部でマクドナルド兄弟によって語られる、マクドナルドの【本当の始まり】の部分です。

マクドナルド兄弟という二人の天才が、試行錯誤を繰り返しながら、画期的な【システム】を作り出していく過程は、今現在、そのシステムの恩恵に預かっている我々からすると、非常に興味深いですし、そして何より、単純に面白い!

劇中でディック・マクドナルドが、

「我々は、注文から30秒でハンバーガーを提供するんだ。30分じゃないぞ」

と語るシーンの、【成し遂げた者】ならではの誇らしそうな顔は、見ているこっちまで元気になるような印象深い味わいです。

そして、そこで出てくる正真正銘の【元祖マクドナルドのハンバーガー】の美味そうなことといったら——!!!

バンズにピクルス2枚、みじん切りのオニオン、ケチャップとマスタード、そして、ビーフパティという、現在のマクドナルドのハンバーガーと全く同じ構成ながら、ここまで違うか!! という、見るだけで美味しさの伝わってくるそのビジュアル

材料は質素なのに、肉厚で完璧に焼き上げられたビーフパティの存在感だけで、「これは美味いだろう!」と思わされること請け合いです(笑)

マクドナルド兄弟の理想と、レイ・クロックの偉業

本作では、マクドナルド兄弟が目指していたのが、本当に美味しいハンバーガーを、いかに早く、いかに安く提供するかという、まさにお客様第一のお店だったんだなぁということが随所から感じられます。

今のマクドナルドのバーガーが【まずい】とまでは言いませんが、もし、マクドナルド兄弟がそのまま【マクドナルド】を続けていたら……と思うと、とても残念でなりません。

おそらく、彼らの品質保持へのこだわりが現在に伝えられていれば、あちこちで発覚する異物混入不祥事や、例のチキン事件もなかった、あるいは、非常にレアケースになっていたのではないでしょうか。

もっとも、その場合、そもそも我々の口まで、マクドナルドのハンバーガーが届いているという可能性すら低いのですが……。

いえ、下手をすると、現在ある全てのハンバーガーチェーンや、ファストフードチェーンすらなかった可能性もありますね。

それほどまでに、レイ・クロックが成し遂げた偉業は凄まじいです。

ある種、飲食業界を一変させたのですから。

もっとも、本作を観る限りでは、その偉業の数々は、彼が成し遂げたというよりも、他人の考えに上手く乗ったという風にしか見えません。

ナイトクローラーの時も書きましたが、結局、成功するというのは、こういうことなのかもしれませんね。

(ちなみに、個人的には、自分で考え、行動しているという意味においては、ナイトクローラーのルイスの方がまだ好感が持てる気が……するような気配的香りが微かにどこかにあったかもしれない)

trifa.hatenablog.com


あちこちに込められた皮肉

ちなみに、本作の原題は『THE FOUNDER

意味としては、創始者とか、【創業者】とか、そんな意味です。

確かに、本作の主人公、レイ・クロックはマクドナルド】の創業者と呼ばれています。

しかし、本作を観るだに、このタイトルは非常に皮肉が効いているとしか思えません。

ナイスセンスです。

また、皮肉と言えば本作でも描かれている通り、レイ・クロックの愛読書(?)は、かの有名な『The POWER of POSITIVE THINKING』です。

これは、トランプ大統領が、唯一、尊敬する人物として挙げているピール牧師が書いた自己啓発本のクラシック。

映画的には、『Shape Of Water』の敵役、ストリックが読んでいた本でもありますね。

読んでいる人達を見れば分かる通り……つまるところ、そういうことです

 


マクドナルド公認じゃなくても公開できる

最後に、ハリウッドと日本のちょっとした違いをご紹介しておきます。

それは、本作が現役バリバリ企業の闇を描いた作品であり、また、その企業の公認を受けていないにもかかわらず、なんの問題もなく公開に踏み切れていること。

これ、日本だと、今のところありえません。

日本映画や漫画なんかを見てると、明らかに【あの会社】とか、どう見ても【あの商品】みたいなのが、ちょっと名前を変えて出てくるってよくありますよね(コカ・コーラが、ロカ・コーラになってるとか、そんなのです)。

ハリウッド(というか、アメリカ)だと、フェアユースと言って、著作物の利用が、【ある判断基準を満たした公正なものと判断されれば、著作者の許可なく使用できる】という法律があるのです。

映画というのは総合芸術、つまり、芸術です。

だから、その作品において著作物が公正に使われているということなら、本来であれば、芸術を作るのに許可なんていらないはずなんです。

にも関わらず、日本のエンタメ業界は、【誰かに忖度して】それを認めていないわけですね。

それが一概に悪い、とまでは言いませんが……なんていうか、ここ最近の日本らしい息苦しさというか、風通しの悪さを感じる部分だなと思います。

まとめ

ということで、『ファウンダー/ハンバーガー帝国のヒミツ』のご紹介でした。

我々が、普段よく利用するお店の創業エピソードを詳しく描いているというだけでも知的好奇心的に面白い作品ですが、それ以上に、映画としての手腕も半端じゃなく、比較的地味目な話しながら、出来の良い脚本によるテンポのいい展開と、確かな演出、そして、出演者達の演技力グイグイと魅せられてしまいます。

つまり、映画として普通に面白い!

エグい人間ドラマとサクセスストーリーを楽しみつつ、トリビア的社会勉強もできる本作。

マクドナルドを知っている人(つまりは、全ての人)にオススメできる、いい映画でした!!

 

※本日ご紹介した『ファウンダー/ハンバーガー帝国のヒミツ』は、2019/12/12現在、アマゾンプライムビデオにて無料配信中です。

 

ちなみに、『MIHOシナマ』さんのレビューはこんな感じです↓

mihocinema.com