trifa’s grind house.

心に残った映画や海外ドラマの備忘録です。Amazonプライムが主になるかと。

また、アクション映画を更新した『ジョン・ウィック:パラベラム』(ネタバレなし)!!

皆さん、好きな映画ジャンルは何ですか?

切ないラブストーリー? 笑ってすっきりなコメディ? キリキリと締め付けられるようなサスペンス? 見たことのないビジョンを見せてくれるSF? 剣と魔法のファンタジー? 身も凍るようなホラー? 感動のドキュメンタリー? 心から熱くなれるスポーツ

どれも、それぞれ良さがありますよね。

ですが、個人的に、映画の王者は、やはりアクション映画だと思います。

なぜなら、映画自体が、アクション(動き)を主体としたエンターテイメントだからです。

古くは、バスター・キートンの時代から、西部劇や時代劇、香港武侠、80年代の肉弾アクションに、マトリックス以降のワイヤーとVFXのアクション、そして、『300』からの極端なタメを作るアクションを経て、今は、マーヴェルを主体とするCGバリバリのアクションと、逆に、とことんリアルを突き詰めたアクションの二極化の時代を迎えていると思います。

このように、段々と進化していくアクション表現は、常に映画界の最前線を更新し続けています。

そんな、アクション映画を観続けることの面白さの一つが、【後の時代の作品に影響を与える一本に出会うこと】です。

いくつか紹介するならば、ムキムキマッチョが重火器で敵を倒すというそれまでの主流ではなく、普通のおっさんがとんちで敵を倒すという新機軸を打ち出した『ダイハード』。実用性は度外視して絵的な美しさを追求し、各ジャンルに様々なフォロワーを生み出したリベリオン。たった一本の映画の中で、ブルース・リーの時代から現代までの格闘アクションの全てを、怪我すらいとわない生身のアクションで描き切ったチョコレート・ファイター。容赦ない攻撃を【見せつける】ことで、恐怖までも武器にし、さらに、噛みつきすら利用するホンモノのナイフアクションをしてみせた『アジョシ』。ビルの中というワンシチュエーションのもと、高速の肉弾戦を濃密な密度で描いたザ・レイド

これらは全て、その時点でのアクション映画のレベルを一段上へと引っ張り上げた作品ばかりです。

そして、その最新の潮流が、チャド・スタエルスキ監督と、彼の率いる世界最高峰のアクションスタント集団【87eleven action design】が作り上げた、『JOHN WICK/ジョン・ウィックシリーズです。

その最新作が、先週金曜日(10/4)から、ようやく日本でも封切られました。

早速拝見してきたので、ご紹介します。

はっきり言って、傑作です

『JOHN WICK:Chapter 3-Parabellum/ジョン・ウィック:パラベラム』のあらすじ

かつて、殺し屋を殺す殺し屋【ババヤガ】と呼ばれ、全ての殺し屋から、尊敬と恐怖の対象とされていた伝説の男、ジョン・ウィック

すでに引退していた彼であったが、とある事件をきっかけに、復讐の鬼として、殺し屋界に一時復帰。無事復讐を遂げ、再び隠居生活に戻ろうとする彼だったが、それを許さぬ過去の盟約により、再び殺しを請け負うことに。

なんとか依頼を成し遂げた彼であったが、依頼主に裏切られ、今度は彼自身が狙われてしまう。ゆえに彼は、依頼主に牙を剥き、ある重大な掟を破る。

殺し屋界の掟を破ってまで、依頼主を殺害したジョン。

そんな彼を、世界は許さなかった。

掟を破った者には、絶対なる死を。

全世界の全ての殺し屋に対し、ジョンの懸賞金情報が送信される。

殺害命令が下るまで、あと、1時間——。

 

「Guns.Lots of guns(銃をくれ。どっさりと)」

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レビュー(ネタバレなし)

いやぁ、やってくれました!!

見事。

見事です。

そもそも、一作目から「これは、すごいのが出て来たぞ!」という感覚はありました。しかし、まさかここまでのモノになるとは——!!

そんなわけで、今回は、シリーズを俯瞰しつつ、最新作の魅力を語っていきます。

斬新かつフェティッシュなアクションや銃器描写の数々

柔術(というか、ジョンのルーツ的に考えると、コマンドサンボ?)と、閉所での射撃を想定したC.A.R systemを組み合わせた、ガン・フーの斬新な格好良さ。

状況により、様々なスタンスで撃つ銃撃のプロっぽさ。

そして、リロードまで描写するフェティッシュさ。

俺達の観たかったガンアクション映画がついに登場した瞬間でした。

そして2作目では、さらにディテールのフェティシズムを加速させ、銃ソムリエによる解説や、スリーガンマッチ(ハンドガン、ショットガン、ライフルという3種の銃器を次々と切り替えながら的を撃つ競技。記事の最後にキアヌ自身の練習風景をリンクしておきます。彼自身、達人級です)の要素を取り入れた戦闘、拾った銃のチャンバー(薬室。弾丸の発射準備をする場所)を片手でチェックするなど、マニアックながら最高にクールな描写が増えました。

独特の世界観

また、ノワール調かつ、ある種ファンタジックな世界観も魅力的です。

主人公が、かつて属していた殺し屋の世界には、独自の通貨と厳密なルールが存在しており、まるで、アメコミや少年漫画にでも出てきそうな世界です。

例えば、独自通貨である金貨を利用したやり取り。明確なルールが示されるわけではありませんが、劇中の描写を観るに、どうやら、1枚につき1つ仕事を依頼できるようなシステムになっているようです。そして、その仕事を頼む相手も、メインとなる【殺し屋】だけでなく、【死体処理業者】、【闇医者】、【銃ソムリエ】、【仕立て屋】など、様々な分野の専門家がおり、彼らが殺し屋コミュニティのようなものを構成しているというのが、たまらなく面白いです。

2作目からは、殺し屋コミュニティの情報を統括する部門も出てきましたね。世界中に情報を送信しているのに、使っているのはタイプライターや旧式のコンピュータで、従業員(?)は全員パンキッシュな見た目というのもクールです。

また、ルールに関して言えば、象徴的なものとして、【ホテル・コンチネンタル】の中では殺しをしてはいけないという【聖域】があります。

このルールにより、殺し屋同士はどんな状況でも、コンチネンタルの中に一歩でも入れば、殺し合いをやめ、なんなら、一緒に酒を呑みだしたりもするという、シュールな状況が生み出されます。また、このルールは、ただ面白いだけでなく、シリーズを通して、重要な展開にも関わってくるところが上手いです。もちろん、本作でもそれは変わりません。

本作はどうか?

革新と古典の織りなす、華麗なるアクションのマリアージュ

では、本作のレビューです。

結論から書きますと、「アクション映画の歴史を更新する傑作」でした。

これでもか、これでもかと、見たことのない斬新さと、過去の作品へのオマージュの両方をあわせ持つ、最高のアクションが次から次へと滅多打ちです。

図書館での、分厚い本を武器にした、「こんな殺され方は嫌だ」なブック・フー。

古典武器博物館(?)での、二つのリボルバーを一つに組み立て直す『続・夕陽のガンマンオマージュから始まる、接近状態での刃物の投げ合い。

馬小屋での「馬に蹴られて地獄へ落ちろぉぉぉおお!」と叫びたくなる、Gガンダムオマージュ(絶対違う)なホース・フー。そこから、流れるように馬とバイクのチェイスシーンへ移行。ここでは、ニューヨークのセクシーな夜景を舞台に、西部劇オマージュな描写が繰り広げられます。

そして、本作の白眉、カサブランカでのバディアクション+ワンちゃん大活躍なドッグ・フーシークエンス。ワンちゃんの活躍っぷりが、もはやファンネル(ガンダムの超能力兵器。機体の周囲を飛び回り、使用者の思考に合わせて攻撃や防御を行う)です。たぶん、スタッフはガンダム好き(だから違うって!)。

まぁ、素直に見れば、どっちかと言うと、『MGSV』『Far Cry5』っぽいです(どちらも、犬を相棒にカチコミできるゲーム)。二匹のシェパードがカッコいい&可愛いですし、ハル・ベリーのキレッキレなアクションも素晴らしいです。

その後は、ブラック・レインマトリックス:リローデッド』を合体させたようなバイクチェイスを経て、最終決戦へ移行。

そこでは、防弾技術の進歩により、何発当てても死んでくれない無数の敵を相手に、組み付いてヘッドショットの嵐!  からの、強力なショットガンへ持ち替えての豪快な銃撃戦という流れが素晴らしいです。

フェティッシュな描写としては、相変わらず、カービンライフルを単発撃ちで運用するところや、呆れるほど膨大な時間を実銃の訓練に当てたキアヌだからこそできる、ちょっとどうかしてるレベルで素早いショットガンのリロード辺りがグッと来ます。

最終決戦終盤では、今作でのライバルである零(ゼロ)が率いる忍者部隊とのチャンバラ&肉弾アクション。しかも、忍者部隊には、あのザ・レイドシリーズで圧倒的な強さを見せた、ヤヤン・ルヒアンセセプ・アリフ・ラーマンが、代名詞とも言えるカランビットナイフを携えてコンビで参戦!  こんなん、アクション映画文脈的に、熱くないわけがないです。

そして、ついに迎える零との一騎打ち。座頭市ライクな長ドスを華麗に使いこなす彼を相手に、ジョンは異常なまでのタフネス(個人的には、ジョンの強さの本質は、ガン・フーをはじめとする戦闘スキルの高さよりも、どんなに攻撃を受けても立ち上がるタフネスさと、決して引かない強靭な精神力こそが、彼最大の武器だと思います)を武器に素手で挑みます。

噛みつきすらいとわない彼の戦いっぷりは、まるで『アジョシ』ウォンビンの如し。

他にも、序盤の展開で「ベルトも外せ」と言われて、鑑賞者的には「そこまで警戒しなくても……」と思わせておいてからの、ラストバトルでの「ベルト、ダメ、絶対」なベルトさばきなんかも笑いました。

このように、本作のアクションは様々なオマージュを含みつつ、それでいて、今まで見たこともない斬新な殺陣が、凄まじい密度とスピードで展開していきます。

言うなれば、革新と古典が織りなす華麗なるアクションのマリアージュです。

おそらく、アクション映画として、これ以上のものはしばらく現れないでしょう(と思いつつ、案外、早く更新されたりするのもまた、アクション映画の魅力なんですよね笑)。

その他の見どころ

ジョン・ウィック』シリーズは、もちろん、アクションが最大のキモではありますが、その他にも様々な魅力があります。

以下、思いつくままに書いてみます。

①登場人物がステキ!

ジョン・ウィック』シリーズは、一癖も二癖もある登場人物達も魅力の一つですが、本作では、マーク・ダカスコスがファニーに演じた零と、彼率いる忍者部隊が、なかなかのものです。

ジョンを付け狙う刺客として登場する彼らですが、同時にジョン・ウィック大好き集団】でもある彼ら。側近の二人は、ジョンと戦いの最中でもその想いを語り出しますし、リーダーの零に至っては、とあるシーンでジョンの隣にピタッとくっついて座ります。その仕草の面白可愛い様子が最高ですし、それで、迷惑そうに座る位置を変えるジョンもまた最高です(笑)

あるいは、零の登場シーン。彼は、普段、寿司屋を営んでいるのですが、なんと、その店にきゃりーぱみゅぱみゅにんじゃりばんばん』が流れているのです。いや、お前、正体隠す気ないじゃん(笑)

ジョンに負けず劣らず強いのに、とにかく、ファニーな魅力たっぷりな零なのでした。

あとは、やはりカサブランカでのシークエンスで、アクション的見せ場を掻っ攫っていくハル・ベリー演じるソフィアが、美しくてカッコいい!  二匹のワンちゃんとの息の合ったコンビネーションは必見ですし、非常にタフに見える彼女自身が背負っている、とある宿命は、切なくて胸が締め付けられます。

その他、シリーズ常連組も大活躍。特に、まさかのあの人が銃を手に取るシーンは、シリーズファンなら燃えること必至!

②意味ありげな小道具がステキ!

ところどころに登場する、意味ありげな小道具も『ジョン・ウィック』に花を添えています。

例えば、シリーズ全作で印象的に用いられる金貨や、二作目で明らかになった、絶対的契約の証である誓印

銃器なら、ローレンス・フィッシュバーン(マトリックスのモーフィアス役で有名)演じるキングから手渡された、カスタム済みのキンバーウォーリアー(ジョンは海兵隊に所属していた過去がありそうだし、もしかすると海兵隊時代に使っていたものかも?)。

そういった印象的な小道具が、今回も登場します。また、本作では、とある小道具に関する場所が舞台として登場したりして、シリーズファンとしては、「おぉ……」と嬉しくなりました。

③『マトリックス』オマージュがステキ!

アクションの節でも書いた通り、本作は、様々な過去作へのオマージュが捧げられている作品です。しかしながら、やはり、キアヌファンとしては、マトリックス』へのオマージュがグッときます。

そもそも、キアヌだけでなく、チャド・スタエルスキ監督のルーツにも大きな影響がある『マトリックス』(チャド監督は、もともと『マトリックス』で、キアヌのスタントダブルをやっていました。要するに、危険過ぎるシーンを、キアヌの代わりに演じてたんですね)。

今までも、モーフィアス役のローレンス・フィッシュバーンが、ジョンの過去を知る男として登場したり、ジョンが頼りにする闇医者が、キーメイカー役のランダル・ダク・キムだったりと、配役的な『マトリックス』オマージュがありました。それに加えて本作では、セリフ(あらすじで書いた”Guns.Lots of guns”も、『マトリックス』のセリフです)やアクション、あるいは照明でのオマージュもあり、『マトリックス』ファンはニヤリとすること請け合いです。

④タイトルの意味

ちなみに、というレベルなんですが、本作のタイトルにある、「パラベラム(parabellum)」ですが、かの有名な【9×19mm parabellum】(色んな作品によく登場する、ベレッタのM9なんかに使う弾丸です。.45ACPと並び、弾丸と言えばコレって感じですね)という弾丸から来ています。

さらには、その語源であるラテン語のことわざ、”Si Vis Pacem,Para Bellum(平和を望むなら、戦いに備えよ)”ともかかっています。

なぜ、そのような副題になっているかは、最後まで観るとわかりますよ。

まとめ

ここまで、長々と語ってきましたし、なんなら、語ろうと思えばまだまだいくらでも語れる作品ではあります。

それほどに、濃い

それが『ジョン・ウィック:パラベラム』です。個人的には、シリーズとしては、二作目よりも一作目の方が好きだったので(とは言え、二作目ももちろん文句なしの素晴らしさです)、その一作目のハードルを越えられるかどうかが心配でした。

しかし、そんなもんは冒頭の20分くらいで綺麗さっぱり吹き飛ばされました(笑)

確実に、シリーズ最高傑作です。

レビューブログを回ってみると、中には「アクションは凄かったけど……」的なレビューも見かけますが、それは的外れな指摘だと思います(その人の感想まで否定するつもりはありません。以前にも書いた通り、映画は極めて個人的なものですから。当然、好き嫌い、合う合わないは、あって然るべきです)。

本作は、アクションが凄いということこそが凄い映画なのです。しかもその凄さは、激しいとか、素早いとか、極力カットを割らず、しっかり流れで見せているというような表面的な凄さはもちろんのこと、その裏で、アクション映画の豊富な遺伝子を受け継ぎつつ、更にアップデートしてみせたという偉業こそが凄いのです。

それだけでも十分凄いのに、その上で、魅力的なキャラクターや世界観、そして、独特のテンポと緩急で進むストーリーまでもが面白い。

アクション映画として、ほぼ、死角なしでしょう。

何度も言いますが、本作は、観たことがあるかないかで、映画経験を大きく左右するほどの、アクション映画史に残る傑作です。

好きか嫌いか、合うか合わないかは別として、一見の価値ありです。

映画界隈的には、『JOKER/ジョーカー』の話題で持ちきりって感じですが(もちろん、観に行く予定です。歴史的一作な匂いがプンプンしますし)、『ジョン・ウィック:パラベラム』も、間違いなく重要な一作ですし、中盤で印象的に描かれる、カサブランカでの砂漠の絶景は、映画館で観てこそです。

アクション映画の最先端にして最高峰

是非とも、劇場へ急いでください!!!

 

※今回ご紹介した『ジョン・ウィック:パラベラム』は、2019/10/7現在、全国の映画館にて公開中です。

おまけ

キアヌ・リーブスのタクティカル・トレーニング中の映像です。

(いや、もうこれ、ジョン・ウィックご本人だろ)

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