俳優陣は豪華!だが……『グランド・イリュージョン』
どうも、とりふぁです。
本日ご紹介する作品は、豪華キャスト陣がマジックを使ってお宝を盗み出す、『グランド・イリュージョン』です。
ケイパーモノ×マジックという面白くならないわけがなさそうな本作ですが、はたして、その実力やいかに……?
『グランド・イリュージョン』のあらすじ
4人の天才マジシャンがいた。
大規模なマジックを得意とする、アトラス。
催眠術で相手を手玉に取る、メリット。
脱出マジックならお手の物、ヘンリー。
なんでもすり替える、ジャック。
ある日、彼らは、タロットカードによって導かれ、一箇所に集められ、チームを組むように命じられる。
そうして結成された、フォー・ホースメン。
彼らは、マジックを用いて誰も傷つけずに銀行強盗を繰り返していく。
果たして、その目的とは——?
「近づき過ぎると、見えなくなる」
レビュー
豪華俳優陣による掛け合いが素晴らしい
本作を観て、まず初めに思ったのが、「キャスト豪華過ぎないか?!」ということでした(笑)
マイケル・ケイン、モーガン・フリーマンという『ダークナイト』な布陣に、ジェシー・アイゼンバーグ、ウディ・ハレルソンの『ゾンビランド』勢。
『イングロリアス・バスターズ』のメラニー・ロランに、果ては『アベンジャーズ』のマーク・ラファロまで!!
ナニコレ、寧ろこれぞアベンジャーズじゃん! と言わんばかりの豪華キャスト。
もちろん、実力派揃いなので、その掛け合いを見てるだけで眼福というもの(笑)
特に、メラニー・ロランのキュートさにはやられました。
あとは、ジャック役のデイヴ・フランコが、かなりイイです。ストリートワイズ(学はないけど頭はキレる、路上の天才的な意味)だけど、先輩達を心底尊敬してる感じが、すごく可愛いカッコいい。
本作で言えば、アクション的な魅せ場は彼が持っていきますしね!
彼とマーク・ラファロ率いるFBIとの、マジック的な発想を活かした追いかけっこシーンは本作の白眉です!!
ただ、まぁ、ぶっちゃけ、本作で私が褒められるところは……キャストの頑張り……くらい…なんです……よね……(汗)
以下で、個人的に好きじゃなかった点について語っていきます。
ケイパーモノの肝をことごとく無視するストーリー
本作は、ケイパーモノと呼ばれる、何かしらの技能を持ったスペシャリスト達が集まり、お宝を盗み出すというジャンルに区別される作品です。
しかしながら本作は、そのケイパーモノの肝が、ことごとく無視されていきます。そこが私としてはとてもがっかりでした。
例えば、本作は、ほぼ初対面のマジシャン達が集められ、強引にチームを組まされるところから始まります。
そうなると、こちらとしては当然、【反発し合いながらも、段々とチームワークが出来上がっていく過程】を楽しみにすると思うのですが、本作ではその部分を丸々カット。
次に彼らが出てくる時には、もうすっかりチームになってしまっています……。
いや、そこ描かないなら、初めから「ご存知、フォー・ホースメン!」ってな具合に、もともと強盗マジシャンチームとして活躍してるって設定でよかったじゃん??
私は、この時点で結構冷めてしまいました。
しかも、あらすじでは一応、それぞれのマジシャンの特徴を書いてみたのですが、ぶっちゃけ、それも活かされません。せいぜいが、メリットの催眠術と、ジャックのすり替え術です。
というか、メリットの催眠術が強力過ぎて、「お前一人でよくないか?」とさえ思えるレベルです。
さらに問題なのが、ケイパーモノなのに、彼らの目的がよく分からないことです。
普通のケイパーモノなら、まず狙うべきお宝が示され、次に、そのお宝がいかに厳重な警備下にあるかが説明され、そして、それに対してどう対処するのか? というのが王道にして最高にアガる作りだと思うのですが、本作ではなぜか、彼らを追う側の視点で進む&実は彼ら自身も何が目的だか分かっていない(一応、最後に理由は明かされますけどね……でも、結局同じことです)ため、そういったケイパーモノ的お約束がなくなっているのです。
しかも、肝心の強奪シーンすら、本作はとある問題を抱えているため、全くアガれないのです(詳しくは後述します)。
そんなわけで、ケイパーモノとしての魅力は壊滅的だと思っていいです。
ここまででもどうかと思うレベルなのですが、しかし、本作で私が個人的に一番許せないことは、まだ他にあるのです。
マジックが題材なのに、マジックに対する理解や誠意がない
本作で私が一番許せないことは何か。
それは、【マジックが題材なのに、マジックに対する理解も誠意もない】ということなのです。
本作の主人公は全員がマジシャンで、強奪もマジックにのっとって行われる、つまりはマジック映画であるというのは疑いようがないことなのですが、本作においては、そのマジックこそが一番ダメなのです。
さて、なぜダメなのかということを説明するために、まず、マジックの特性と、映画の特性をお話ししておきます。
まず、マジックとは、もちろん、驚くべき奇跡のようなことをやってみせるというエンターテインメントのことを言います。
しかしながら、そのミソは、奇跡に見えて、実はちゃんとタネがあるということなんですね。
どんなにすごいことや、どんなにありえなさそうに見える現象でも、【必ず合理的な説明ができる】。
それがマジックなのです。
もっと言えば、マジックとは、【奇跡を起こすために、合理性を積み重ねていく行為】とも言えるでしょう。
そして次に、映画(というか、映像コンテンツ全てに言えること)についてですが、これはもう近年のCG技術を例に出すまでもなく、映像である以上、描こうとすれば、どんなにありえないものだろうといくらでも描けるのが、映画です。
つまるところ、基本的には【映画に奇跡はない】んですね。
ということは、言うまでもなく、合理性を積み重ねることで奇跡を起こすマジックと、どんな奇跡でも狙い通りに描ける映画とは、食い合わせが非常悪いわけです。
そのため、映画でマジックを描くなら、そこには、相当な覚悟と計算(例えば、役者が本当にマジックを行い、それをワンカットで見せるなど)が必要で、まして、CGなんか使ってしまったら、全てがご破算なわけです。
ここまでで、勘のいい読者の方々は、もう分かりましたね?
そう、本作のマジックには、タネ(=合理的な説明)がなく、あまつさえ、CGまで使ってしまっているのです。
これには、本当に呆れてしまいました。
しかも、そんなあり得ないマジック的な何かを利用して強奪を行うので、強奪シーンも「どうでもいいよ!」となってしまうわけです。
これは、マジックが好きなら好きなほど、ケイパーモノが好きなら好きなほどガッカリする描写だと思いますし、マジックに対する理解も誠意も感じられず、ただケイパーモノの強奪トリックを考えるのが面倒で、ギミックとしてマジックを使っているのだとすら感じ、正直、私は怒りを覚えてしまいました。
冒頭のシークエンスだけは、インチキなしにマジックをやって、観ているこちら側も上手くひっかけてくれるんですけども……なんでアレを全編に渡って徹底しないかな。
まとめ
ということで、『グランド・イリュージョン』のご紹介でした。
個人的には、エンタメは「楽しけりゃいいじゃん!」というスタンスなのですが、本作の誠意のなさは、さすがに擁護できません。
はっきり、嫌いです。
ただ、キャストのがんばりや、掛け合いの楽しさは確かなので、ここをどう評価するかですね。
ちなみに、続編の『グランド・イリュージョン/見破られたトリック』も観たのですが、前作で期待を打ち砕かれていたのと、今度は主人公チーム視点で物語が進むのとで、マジックに対する理解&誠意のなさにさえ目をつぶれば、そこそこ面白い作品でした。
特に、中盤のトランプをリレーしていくシーンのバカバカしい面白さは、一見の価値ありですね。
また、敵役をダニエル・ラドクリフが生き生きと演じてるのも味わい深いです(笑)
ただまぁ、科学vsマジックっていう対立構造もどうかとは思いますけどね。
なにせ、マジックは、それが大規模になればなるほど、科学と密接に関わってきますし、なんなら、トップクラスのマジシャンは最先端の科学を常に追い求めていますし。
ま、キャストの魅力に焦点を当てて楽しめば、どちらも楽しめると思います。
それくらい、キャストは見事!!
ただ、先に『見破られたトリック』を観て、一作目に戻るのは絶対にオススメしません。
一作目のオチとして非常に大きなちゃぶ台返しがあるのですが、二作目は、当然それを前提として話が進むため、先に二作目から観てしまうと、一作目は全く面白くなくなってしまうと思います(^◇^;)
(なんなら、二作目の予告編すら観ちゃダメなレベルです!!!)
※今回ご紹介した、『グランド・イリュージョン』二作品は、2019/12/26現在、アマゾンプライムビデオにて無料配信中です。
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