キリスト教的解釈を加えたハリウッドリメイク『オールド・ボーイ』(スパイク・リー版)
どうも、とりふぁです。
近年、日本原作の映画が、他国で作られることがちらほら見られるようになってきましたね。
『ドラゴンボール』しかり、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』しかり。
あとは、『ワンピース』がNetflixで実写化されることも発表されましたね。
そんな、日本原作、他国製作作品で、映画史的に最も重要な作品といえば、パク・チャヌク監督、チェ・ミンシク主演の韓国映画『オールド・ボーイ』ではないでしょうか?
同作は、世界へ向けて韓国映画の実力を示してみせた一作であり、同時に、とんでもない結末の胸糞映画でもある、私自身も大好きな作品です。
本日ご紹介するのは、そんな『オールド・ボーイ』を『ドゥ・ザ・ライト・シング』、『ブラック・クランズマン』などの巨匠、スパイク・リーがリメイクした作品です。
韓国版は、とにかくえげつなさが際立つ作品でしたが、本作はどうなのでしょうか?
『オールド・ボーイ』のあらすじ
ビジネスマンのジョーは、傲慢で、利己的で、アルコール中毒という、おおよそ最低の人間だった。
ある日、そんな彼が拉致・監禁されてしまう。
わけもわからぬ監禁生活の中、唯一の救いはテレビショーのみ。
しかし、そんなテレビからもついに絶望の情報が飛び込んでくる。
彼の妻がレイプされた上に殺され、そして、その犯人は自分だというのだ。
逃げ場のない絶望感の中、娘に会うことだけを希望の糧に、彼は監禁生活を乗り越えていく。
そして20年の時が流れた時、彼は、突如として解放された——!!
「お前は、基本的な質問をしていない」
レビュー
原作は日本漫画
本作およびパク・チャヌク版の原作は、2018年に惜しまれつつもこの世を去った、故・土屋ガロン(狩撫麻礼)原作、峯岸信明作画による日本漫画、『ルーズ戦記 オールド・ボーイ』です。
ただ、原作とは言っても、両作品とも、設定は再現されていても、その物語はかなり改変されているため、原作というよりは、寧ろ原案くらいと考えた方がいいかと思います。
とはいえ、やはりその肝となる【ある男が、長期間監禁された上で解放される】という設定の面白さこそが本作の魅力であることは確かですね。
監禁ビジネスの妙なリアル感や、ミステリーの要素を、【なぜ監禁されたのか】ではなく、【なぜ解放されたのか】というところへ持っていったところも、やはり面白いあたりです。
物語としてのエグみを楽しむ
さて、原作から大きく改変された物語ですが、これがまたかなりエグいです。
詳しくはネタバレになるので書きませんが、その展開には「おぉ……」と言葉を失うでしょう。
あの結末は、あまりにも辛すぎます。
そのネタについては、いくつかの違いはあるものの、基本的にはパク・チャヌク版を踏襲しています。
しかし、それを超えて迎える結末については、パク・チャヌク版からもまた改変されており、ある種、非常にキリスト教的な解釈が加わっていました。
個人的には、結末としてはこちらの方が好みでしたね。
というか、私個人としては、「こんな目には絶対に会いたくないけど、もし万が一こういうことになってしまったら、スパイク・リー版の結末を選びたい」と思いました。
繰り返しますが、「こんな目には絶対に会いたくない」ですけどね!!!
また、パク・チャヌク版、スパイク・リー版、共に無限地獄には変わりはないですが、こちらの方が、まだ救いがあると思うのです(後出しジャンケンではありますが、作品構造的帰着としても、本作の方が綺麗ですね。もっとも、じゃあ本作の方が優れているかというと、それはまた別の話ですが)。
『アベンジャーズ』大活躍な演技アンサンブル
ちなみに本作、今の視点で見てみると、主演、ジョシュ・ブローリン、ヒロイン、エリザベス・オルセン、脇役、サミュエル・L・ジャクソンというとで、笑っちゃうほどガッツリ『アベンジャーズ』組なのも面白いところ。
本作の三人が大暴れするのはこちらです。
もちろん、いずれ劣らぬ演技派揃いのため、三人の演技アンサンブルがまた素晴らしい。
ジョシュ・ブローリンの粗野なクズっぷりは板についたモノですし、エリザベス・オルセンの聖女然とした演技も引き込まれます。サミュエルのぶっ飛んだ演技も、いつもながらですね(もちろん、Mother fuxxerも連呼してます笑)。
また、主演の二人は、本作における脱ぎっぷりも素晴らしいです。
ジョシュはお尻を、エリザベスは乳首まで惜しげもななく披露しています。
下品な目線と思われるかもしれませんが、本作の場合、【性】というテーマとは切っても切り離せない関係にありますので、二人のこの頑張りは、称賛に値するものだと思います。
これをやるかやらないかで、作品の重みが結構変わってきてしまいますからね……。
そして、そんな『アベンジャーズ』組を迎え撃つのは、ニール・ブロムカンプの盟友で、ヨハネスブルクを代表する個性派にして名優、あのシャールト・コプリーです!!
世にも珍しい、全編主観映像のアクション映画『ハードコア』では、次々と現れるシャールト・コプリーという、非常に頭がクラクラする、「いったい、一人何役なんだ!!」と叫びたくなる演技をしてみせた彼が、本作でもその魅力と実力を遺憾なく爆発させています。
本作の彼は、端的に言って気味が悪い!!!
そんな演技派達の演技アンサンブルこそが、本作最大の魅力かもしれませんね。
まとめ
というわけで、スパイク・リー版『オールド・ボーイ』のご紹介でした。
ぶっちゃけ、途中で出てくる横スクロールアクション的カメラワークのアクションの魅せ方や、物語全体の救いのない悲惨さなど、作品としての魅力や、得体の知れないパワーはパク・チャヌク版が圧勝だとは思います。
しかしながら、スパイク・リー版はスパイク・リー版で、魅力的な俳優陣による演技の応酬や、パク・チャヌク版からさらに改変を加えられた箇所の面白みという魅力があると思います。
特に、物語の結末や、途中で明かされるメディアについての解釈などは唸らされました。
パク・チャヌク版未見の方はもちろん、パク・チャヌク版を観た方も、新たな気持ちで楽しめると思います。
そして、パク・チャヌク版未見の方は、映画史に残る傑作ですので、ぜひぜひ、そちらもご鑑賞ください!!(体力のある時にでも笑)
※本日ご紹介した『オールド・ボーイ』は、スパイク・リー版、パク・チャヌク版とも、2020/2/6現在、アマゾンプライムビデオにて無料配信中です。
毎度お馴染み、『MIHOシネマ』さんの記事はこちら(パク・チャヌク版)↓