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麻薬戦争という名の深淵を覗け――『ボーダーライン』

どうも、trifaです。

今回は、エミリー・ブラント主演、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作、『ボーダーライン』のご紹介です。

本作は、メキシコ麻薬戦争を描いたアクション・サスペンスであり、冒頭からエンディングまで、常に続く異常なまでの緊張感が魅力の作品です。

 

『ボーダーライン/SICARIO』のあらすじ

FBIのケイト・メイヤーは、女性でありながら、銃撃戦の現場でも大いに活躍し、上司や同僚からの信頼も厚い捜査官だ。

そんな彼女と彼女のチームのメンバーは、ある日、誘拐事件の容疑者宅に奇襲を仕掛け、銃撃戦の末に容疑者の射殺および確保に成功する。

そして、その建物の壁から、無数の被害者の死体を発見し、彼女らの思っていた以上に大きな事件であることが判明。

なおも現場検証を進めようとする最中、裏庭に仕掛けられた爆弾により、捜査官2名が死亡する。

任務を終えたケイトを待ち受けていたのは、国防総省のエージェント、マット・グレイヴァーだった。

上司により命ぜられた新たな任務は、彼のチームに同行し、国境を越え今回の事件の首謀者、マニュエル・ディアスを確保すること。

仲間の無念を晴らせるならばと志願した彼女であったが、それは、彼女の善悪の境界線を揺るがす、暗黒の旅の始まりだった――。

「お前はただ、俺達のやることを見ていればいい」 

 レビュー

異常なまでの緊張感に彩られた傑作

本作は、個人的には【生涯ベスト】の一本に挙げてもいいほど大好きな作品です。

その理由はいくつかあるのですが、やはり一番には、最初から最後まで続く異常な緊張感が挙げられるでしょう。

そっけないまでに、徹底して乾き、突き放した映像と演出の数々。ドキュメンタリックでありながら、劇的な映像の切り取り方、そのすべてが完璧です。

しかし、それだけではこの異常なまでの緊張感は生み出せません。

この緊張感の最大の大本は、主人公が【蚊帳の外】であることから来ています。

本作の主人公、ケイトはFBIの腕利き捜査官ではありますが、国境付近での麻薬戦争に関しては、はっきり言ってド素人です。

そんなド素人の彼女が、玄人中の玄人であるマットや、彼の相棒、アレハンドロのチームに同行し、ただただ彼らの行う行為を見せつけられるというのが本作の骨子です。

彼らのやり口は、FBIのように規定を順守したクリーンなものではありません

彼らの目的はただ一つ。

カルテル【混乱】を与えること。

そのために、敵である麻薬カルテルと同様、いえ、それ以上にダーティな手法でもってカルテルを追い詰めていきます。

そんなやり方など知らず、また、倫理的にも同意できないケイトは、詳細なブリーフィングすら知らされず、文字通りただただついて行かされるだけ。

それゆえに、彼女は最初から最後までずっと【蚊帳の外】からこの捜査、いえ、戦争を眺めることしかできないのです。

メキシコ麻薬戦争のリアル

本作は前述したとおり、主人公を【蚊帳の外】に置くことで、異常なまでの緊張感と、置かれている状況の底知れなさを演出しています。

そして、その緊張感と底知れなさこそ、メキシコとアメリカの国境付近で日夜繰り広げられている【メキシコ麻薬戦争のリアル】なのです。

メキシコでは、かつて存在していた強大なコロンビアの麻薬カルテルの崩壊により、そのシェアを奪おうとする複数の麻薬カルテル同士の抗争と、それに加えて、麻薬を取り締まろうとするメキシコ政府、さらに、甘い蜜を吸おうとする現地警察まで含めた、とても入り組み、複雑化した紛争が続いています

その紛争の底知れなさと、街角に死体が転がるのが日常茶飯事という緊張感を、本作では【蚊帳の外】にいる主人公を用いて、上手く表現しているのです。

 

ノーカントリーアントン・シガーという殺し屋の底知れなさが麻薬カルテルの底知れなさを表していて、めちゃくちゃ怖かったですね。

『運び屋』は未見なのですが、こちらも麻薬カルテルモノということですし、なによりイーストウッド監督作ですから、映画好きなら観なければいけないですね

 

ツイストが効きまくったラスト20分

しかし、私が本作を【生涯ベスト】とまで言うのは、ここまで書いてきた理由ももちろんですが、それ以上に、ラスト20分で展開するツイストの効きまくった展開ゆえです。

ネタバレは私の本意ではないので詳しくは書きませんが、文字通り、物語が反転するほどの衝撃展開です。

そして、そのラスト20分の末に、我々は本作の原題である『SICARIO(暗殺者)』の意味を知るのです。

最終カットの切れ味といい、ラスト20分は、映画史に残る傑作といって間違いありません!

まとめ

今回は、メキシコ麻薬カルテルモノ『ボーダーライン』のご紹介でした。

麻薬カルテルモノ、マフィアモノには名作・傑作が多いですが、本作もその御多分に漏れずといった感じです。

特に、ラスト20分の衝撃は、映画好きのみならずとも、是非とも味わっていただきたい!

個人的には原題の『SICARIO』の方がしっくり来ますし、好きではあるんですけれども、国境と善悪の境界というダブルミーニングな邦題、『ボーダーライン』もなかなかナイスですよね。

続編『ボーダーライン・ソルジャーズ・デイ』本作に負けず劣らずの傑作でしたし、そう遠くないうちに公開されるであろう完結編も、今から楽しみです。

ではでは、本日はこの辺にて!!

 

※今回ご紹介した『ボーダーライン』は、2019/11/3現在、アマゾンプライムビデオにて無料配信中です。